BRIEFING.532(2020.07.09)

土地基本法改正で土地所有者にも「責務」

先頃の通常国会では、平成2年度予算に加え、新型コロナウイルス対策を中心とする補正予算(4/30)

及び第2次補正予算(6/12)が成立した。またこの他、55本の法案が成立、うち8本は国交省関連で「土地基本法等の一部を改正する法律」もその1つである。

この改正法の主なポイントは次の2つである。

@土地の適正な利用・管理の確保(土地基本法の改正)
A地籍調査の円滑化・迅速化(国土調査法等の改正)

@については、まず法の目的(第1条)でこれまで「責務」を課されていた「国、地方公共団体、事業者及び国民」に「土地所有者等」が新たに加えられている。しかもその順番は「国」を差し置いて第1番目である。国や地方公共団体よりもまず、当事者である所有者等に「責務」を課したのだ。

新設された第4条第1項には、土地が土地所有者等による適切な利用及び管理を促進する観点から「円滑に取引されるもの」とする旨が定められ、従来第4条を単独で占めていた「投機的取引の抑制」は第2項に回っている。今時「投機的取引」を咎めることより、「適切な利用及び管理」を促すことを重視したと見られる。

ちなみに、この法律に度々登場する(土地の)「利用」という言葉は「利用と管理」に悉く置き換えられている点にも注目すべきだ。「利用」は収益につながるが「管理」は費用につながる。両者はセットだという思いが溢れ出る。

なおこの法律で「土地所有者等」とは「土地の所有者又は土地を使用収益する権限を有する者」を言う。「等」は借地権者と言ってよいだろう。

第5条の見出し(条の冒頭の括弧書き)は、従来(価値の増加に伴う利益に応じた適切な負担)であったが、改正法では(土地所有者等による適切な負担)と改められた。これまでは地価上昇の恩恵を受けた人に相応の「負担」を求める趣旨であったところ、何の役にも立たない土地を持っている人にも「その価値の維持」に要する「適切な負担」を求めたものである。

土地所有者等の責務は、新設された第6条に「土地についての基本理念にのっとり、土地の利用及び管理並びに取引を行う責務を有する。」と定められている。基本理念とは「土地についての公共の福祉優先」(第2条)、「適正な利用及び管理」(第3条)他である。

一方、第7条(旧第6条)には、国及び地方公共団体の責務が定められているが、これに第2項が新設され、国及び地方公共団体の土地所有者等に対するサポートの努力義務を定めている。土地所有者等にばかり「適切な土地の利用と管理」を押しつけるなということだろう。好きで「土地所有者等」になった人ばかりではないのだから、という現実が背景にあると思われる。

「土地基本法等の一部を改正する法律」は、3月27日に成立、3月31日に公布、4月1日には早くも施行されている。さらに、改正土地基本法第21条によって政府が定めることとされた「土地に関する基本的な方針」は5月26日すでに閣議決定されている。

ところで冒頭述べたポイントのAは「地籍調査の円滑化・迅速化」である。これまで度々その推進が叫ばれてきた問題である。今更ではあるが、所有者不明土地問題が喫緊の課題となる中、今度こそはと期待したい。


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