BRIEFING.533(2020.08.06)

ウォーカブルなまちづくり

新型コロナの第2波に怯えつつ、良いのか悪いのか、各地の観光地には幾分観光客が戻りつつある。京都の中心地「四条通」界隈も例外ではない。しかしインバウンドに沸いたかつての四条通にはまだ遠く及ばない。

さて、インバウンドという言葉がまだ外国人の需要という意味で一般化する以前、平成27年頃だろうか、四条通の歩道の混雑ぶりはひどいものだった。何しろ今より歩道の幅員が、車道1車線分狭かったのである。北側も南側も。

つまり、かつての四条通は片側2車線で歩道が両側に3.5mずつであったところ、片側1車線に減らされ歩道が両側に6.5mずつとなり、歩道幅は約1.9倍に広がったのである。

それまでは四条通を急ぐ場合、一筋南の「綾小路通」へ迂回するのが賢明であった。但し一筋北への迂回は勧められない。「錦小路通」だからだ(さらに混む)。

この歩道拡幅(車道の減幅)の方向性は平成11(1999)年の「京都市基本構想(グランドビジョン)」に遡る。その第2章第1節の3(だれもが安心してくらせるまち)に見いだすことができる。「自動車交通に過度に依存しない公共交通優先型の交通体系を、先進技術を利用して総合的に構築しつつ、歩くことが楽しくなるようなまちづくりに取り組む。」と。

これが四条通の歩道拡幅に結びつくまでに紆余曲折を経たことは想像に難くない。事実、車道が大渋滞するではないかといった反対意見もあった。しかし平成26(2014)年11月に工事着手、平成27(2015)年10月末に完成を見るに至っている。当初、車道の渋滞は心配された通りで、反対派にとっては「それ見たことか」といったところであったが、状況が周知され、皆が慣れるに従って改善が進み、歩道

拡幅はその後さらに増加した外国人観光客の受け入れに大きく寄与したものと思われる。

これを真似たのか、平成27〜28(2015〜16)年に大阪市も「御堂筋」のごく一部、難波駅付近の約200mで同様の整備を行っている。なお「四条通」は1,120mに渡って行われている。

さて、先頃閉会した通常国会では、都市再生特別措置法の改正があった。6月10日に公布され、その後3ヶ月以内には施行される予定だ。ポイントの1つは開発許可制度の厳格化、もう1つは「居心地が良く歩きたくなるまちなか」の形成に向けた「まちなかウォーカブル区域」の設定である。これにより「まちなかにおいて多様な人々が集い、交流する「居心地が良く歩きたくなる」空間を形成し、都市の魅力を向上させる」という訳だ。

但し、ここで言う「まちなか」とは渋谷や難波を指すものではなく、全国の主な鉄道駅周辺と解すべきだろう。

この法改正に関連し、国交省は昨年7月から「ウォーカブル推進都市」の募集を開始している。そして今年の6月末時点で全国260の都県・市区町がこれに賛同し名乗りを上げている。そこには新宿区、渋谷区、大阪市等も含まれているが、多くは大都市圏ではない市町だ。これらの市町がこの事業の主役となってほしいものである。

人々が集い、交流する空間の形成は、新型コロナ対策としては好ましくない。しかし、ウォーカブルな空間なら換気は十分で心配はなさそうだ。若干の軌道修正をし、新型コロナ対策ヴァージョンの「ウォーカブルなまちづくり」が望まれる。


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