BRIEFING.549(2021.01.14)

土砂災害特別警戒区域内の宅地の評価(1)

財産評価基本通達によると「土砂災害特別警戒区域内となる部分を有する宅地の価額」は、補正前の価額に「その宅地の総地積に占める土砂災害特別警戒区域内となる部分の地積の割合に応じて付表9「特別警戒区域補正率表」に定める補正率を乗じて計算した価額」によって評価される。

付表9の「特別警戒区域補正率表」の通りである。

特別警戒区域の地積/総地積 補正率
   0.10以上 0.90
   0.40以上 0.80
   0.70以上 0.70

この規定は、同通達の改正により平成31年1月1日以降に相続等で取得した財産の評価に適用されることとなった。同区域内は単に危険というだけでなく、区域内において土地の開発規制や建築物の構造規制が生ずることから、このような規定が設けられたのである。

だが実務上「特別警戒区域内となる部分の地積」を正しく求めるのは容易ではない。

土砂災害警戒区域及び特別警戒区域は、土砂災害防止法第7条、第9条により知事が指定するが、その際、知事は国交省令で定めるところ(施行規則第3条、第6条)により、その旨並びに指定の区域等を公示しなければならない。そして「区域の明示については、次のいずれかによる」とあり、以下の3つが示されている。

一 市町村(特別区を含む。以下同じ。)、大字、字、小字及び地番
二 一定の地物、施設、工作物又はこれらからの距離及び方向
三 平面図

では、実際のところはどうであろうか。

東京都の「公示に係る図書」を見てみると、地番の記載はない。所在地(例えば「千代田区永田町二丁目」まで)の記載と平面図(縮尺1:1,000)による明示がされている。大阪府の「公示に係る図書」も同様で、所在地(例えば「豊中市西泉丘一丁目」まで)の記載と平面図(縮尺1:2,500)による明示である。おそらく他の道府県でも同様で、地番まで明示しているところは少ないだろう。

そうすると「特別警戒区域となる部分の地積」はこの平面図を元に概測することになる。地番で指定されておれば、地積測量図はなくても、公簿地積でそれを特定することができるのだが・・。多くの府県では座標データを提供しているから現地での復元は可能だが面倒な話である。

土砂災害警戒区域、特別警戒区域の範囲は、道路や河川、行政区域界や街区とは全く関係なく指定されるから、1画地の土地の一部にだけ指定されることも多く面倒なケースの多発が予想される。

但し、付表9の区切りがかなりザックリしたものであるから、どちらに該当するか微妙なケースは少ないかも知れない。また、どちらに該当しても補正率の差は大きくない(10%刻み)から僅かな面積の相違にこだわる必要もないかとも考えられる。

しかし、固定資産税に係る土地の評価も同様に行うとすれば市町村が大変だ。固定資税に係る土地の評価方法の詳細は、市町村によって異なるが、次回その例を見てみる。


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