BRIEFING.55(2003.5.15)

敷地の細分化規制と地域の地価水準

第1種・第2種低層住居専用地域では、一定の場合、都市計画において200uを超えない範囲で敷地の最低限度を定めることができる(都市計画法第8条第2項第2号、建築基準法第54条の2第2項)。本年1月からは、これを定めることのできる地域を限定せず、すべての用途地域において定めることができるよう、法改正され施行されたところである。
 
さて、敷地の最低限度を定めることは、地域の地価水準にどのような影響を及ぼすであろうか。第1種低層住居専用地域を想定して考えてみる。
 
土地の価格(単価)は、一般にその規模が大きければ大きいほど安くなることが知られている。300uの土地と150uの土地(ともに奥行15mとする)とが並んでいれば、後者の方が単価が高いのが普通である。それは、総額が張らないためにそれに対する需要が増大するからだと考えられている。
 
とすれば、土地を細分化することでその価値が上昇すると言わざるを得ない。そしてその当然の結果として、地域の土地の細分化が進むのである。
 
しかし、その土地の価値が上昇したとしても、その地域の価値はどうであろうか。かつては各敷地にサザンカやキンモクセイの生垣があり、門の上にはマツやモミジが枝を伸ばしていた、そんな地域が今では、道路に面して門扉とガレージが並ぶだけ、といった景色に変わってしまったら・・・。防災上も好ましくない。地域の価値は下落したと言えよう。
 
細分化によってその土地は、他の細分化されていない土地に比べて相対的に価値は上がるであろう。しかし細分化が進めば地域全体の価値が下落し、結局は地価水準がどちらに振れるかは判断しがたい。細分化規制は財産権の侵害との批判もあるが、必ずしもそうとは言えまい。
 
ところが抜け駆け的に細分化して売り逃げする人は得をするので、細分化の流れは自然には止まらない。そこに細分化規制の必要性がある。但し、既存の細分化敷地は救済される(建築基準法第54条の2第3項)。そしてそのような土地は、緑の多い環境下で、手頃な総額(単価は高い)という条件を永久に手に入れた土地ということになる。
 

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