BRIEFING.550(2021.01.22)

土砂災害特別警戒区域内の宅地の評価(2)

総務省は「令和3年度固定資産の評価替えに関する留意事項について」の中で「当該影響を適正に評価に反映させること」と通知している。これを受け(一財)資産評価システム研究センター「土地に関する調査研究」(令和2年3月)は、市街地宅地評価法(路線価方式)においては、土砂災害特別警戒区域であることを次の「いずれかで固定資産税評価へ反映させることとなる。」としている。

ア.状況類似地域の標準宅地の標準価格
イ.その他の街路の路線価
ウ.画地の評価額

なお「その他の街路」は「主要な街路」に対する「その他」だ。「主要な街路」には「標準宅地」が選定されているが、「その他の街路」(「主要でない街路」)にはそれが選定されていない。

さて、上記アイウのいずれかで反映させた場合、他で重複して反映させぬよう注意が必要である。地域によって、どこで反映させるべきかが異なる場合もあろう。アで反映させたものの例外的に指定区域から外れている画地があれば、そこについてはプラスの補正ということもあろう。

しかし、どの段階で反映させるかは、前回述べた区域の指定方法(街区等とは全く関係なし)に鑑みると、多くの場合、ウにならざるを得ないと思料する。

では、実際に市町村や東京都(23区では都が課税)ではどのようにしているだろうか。

東京都(固定資産(土地)評価事務取扱要領)の場合、平成30年度から付表20として財産評価基本通達類似の補正率表を新設している。含まれる地積割合を、20%未満、50%未満、80%未満、80%以上の4区分とし、それぞれ補正率は0.95、0.90、0.85、0.80である。

京都市(固定資産評価要領(土地編))では「画地の一部が土砂災害特別警戒区域に指定された画地に補正を適用するに当たっては、当該画地の全部について補正を適用する」とし、その補正率を0.70と定めている。かなり大雑把な感じだが、実務上の簡便性に配慮した結果であり、著しく不合理とまでは言えまい。ただ、1,000uの土地の内の1uにのみ指定があるような場合には、引っかかる。

名古屋市(土地評価事務取扱要領)も京都市とほぼ同じだが「大規模な画地の一部が土砂災害特別警戒区域に指定されているなどの事情により(中略)均衡を著しく失すると認められるときは、固定資産評価員にりん議のうえ個別に補正率を求めることができる」との規定がある。曖昧な規定だが首肯し得る。

なお大阪市(固定資産評価実施要領)には土砂災害特別警戒区域がないため、これによる補正の規定もない。

さて、ここまで取り上げた例では、いずれもウの段階で補正することとしている。妥当な選択だろう。また、大阪府(固定資産税の課税自治体ではない)のレポート「土砂災害警戒区域指定に伴う土地評価のあり方」も、アイウの方法を挙げた上で「大阪府の場合、土砂災害警戒区域等の評価を行う画地数が少ない場合や、範囲が狭い場合が多い為、状況類似地域による減価や路線価による減価の方法よりも所要の補正で画地ごとに減価する方法が最も適しているのではないか」と指摘している。

逆に、土砂災害警戒区域が広範囲に指定されている地域が多い市町村の場合、アイも選択肢となる場合が考えられる。


BRIEFING目次へ戻る