BRIEFING.553(2021.04.15)

固定資産税額下がらないの?

固定資産税は賦課期日(毎年1月1日)現在の固定資産(土地・家屋・償却資産)所有者に課税される市町村税(東京23区では東京都税)である。その課税通知書は大阪市等ではすでに各納税義務者に送付

(東京都はまだ)されたところである。

新型コロナの影響で商業地を中心に地価はかなり下がっているはずだから税額も・・・と思いつつ開封すると税額は昨年と同じ! 相続税路線価だって一部(大阪市中央区道頓堀1丁目他)で見直されるというのに・・。何かの間違いでは・・・。

さて、土地固定資産税額の基礎となる土地の評価額は実は3年に1回しか見直し(これを評価替えと言う)がされない。そして今年(令和3年)はちょうどはその年に当たっている。過去は、平成30年、27年、24年、21年・・・がその年に当たりこれらを「基準年度」と言い、それ以外の年は「据置年度」と言われる。「据置年度」においては評価替えがないから、原則として3年間同じ評価額が採用されることになる。

では、令和3年、4年、5年の3年間の評価額の価格時点が「基準年度」(令和3年)の1月1日かと言うとそうではなく、その1年前、令和2年1月1日なのである。当初から1年遅れの評価額を3年間使い回しすることになる。当然その間に地価が下落することもあろう。そうすると(税額は据置なので)納税者としては面白くない。

そこで総務省は評価替えの都度、地方税法の附則をいじって、毎年の賦課期日(毎年1月1日)の半年前(毎年7月1日)までの、標準宅地等の価額下落を評価額に反映することができるとしている。今年も従来通りにこの手当(法附則第17条の2)がなされたところである。これを「下落修正」と言いう。

そして今年(令和3年)に限っては、この「下落修正」と従来の負担調整措置(法附則第18条)に加え、税額が前年を上回らないよう、さらなる手当が施されている。新型コロナウイルス感染症により「社会経済活動や国民生活全般を取り巻く状況が大きく変化したことを踏まえ、納税者の負担感に配慮する観点から」(総務省自治税務局)の特別な措置である。

今回の評価替えの価格時点(令和2年1月1日)の地価は、3年前(前回評価替えの価格時点)に比べて大きく上昇しており、その後の半年間の「下落修正」を経てもなお大幅上昇になる場合が多い。従来の負担調整措置で増税幅は制限されるもののやはり増税は辛い。そこで「令和3年度分の固定資産税にあっては、前年度分の固定資産税の課税標準額」(法附則第18条第1項)に抑えようという訳だ。したがって税額も前年の額が上限となる。正に「負担感に配慮」したものと言えよう。

なお総務省はこの措置が「令和3年度に限り」であることを強調している。従って4年度は、従来通りの「下落修正」があっても、税額が上昇する地域が多く発生することが予想される。その頃には「負担感」も感じないほどに経済が回復しているといいのだが。

一方、相続税路線価は毎年見直しされているため、令和2年分の路線価は同年1月1日時点の価格である。そこで、その年内に大幅な下落が生じ「路線価等が時価を上回る状況が確認された地域について」(国税庁)は「地価変動補正率」によって路線価が下げられたのである。

ちなみにこの補正が適用されるのは、今のところ大阪市中央区の心斎橋筋2丁目、宗右衛門町、道頓堀1丁目の3町丁のみで、その率は、1〜6月はなし、7〜9月は0.96、10〜12月は未公表(対象町丁拡大の可能性大)である。


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