BREFING.561(2021.08.23)

流通倉庫のブランド化は誰のため?

「営業倉庫」、すなわち倉庫業者が荷主から寄託された貨物を保管する倉庫は、倉庫業者自らの所有である場合が普通であったが、近年は倉庫業者が倉庫を賃借して「営業倉庫」とする場合が目立つ。かつて「賃貸倉庫」と言うと、荷主が賃借した「自家用倉庫」を指すことが多く、「営業倉庫」と区別するための言い方でもあったが、今は「賃貸倉庫」で「営業倉庫」もある。

すなわち、デベロッパーが開発した大規模倉庫を「営業倉庫」として倉庫業者に、(または「自家用倉庫」として事業者に)賃貸する。テナントは1社、または複数(マルチテナント)。さらにデベロッパーはこの土地建物(倉庫)を(またはその信託受益権を)不動産投資法人に売却し、同法人は投資口を投資家に販売して資金を調達する、という流れになる。

このような倉庫には、従業員のための休憩所、託児所、カフェテリアまでが用意され、賃借人の抱える人手不足という問題に対応している。また、トラックがそのまま5階、6階まで荷物を運び上げられるランプウェイを(しかも上り下り別々に)設け、各階にはトラックバースを多数設けて荷物の積み下ろしを楽にしている。もちろん制震・免震構造だ。倉庫と言うより施設だ。

施設の名称が、感じよい名称でブランド化されていることも特徴だ。かつては、〇〇倉庫第3号、〇〇流通センターといった感じのものが多く、何となく小汚い、気性の荒い男が働く(偏見であるが)場所、時には麻薬の取引が行われ、刑事が乗り込んで銃撃戦(昭和の刑事ドラマか)・・・そんな感じである。今は違う。以下は近年の施設のブランドとそのデベロッパーである。それぞれのブランドの後(一部は前)に地名が付く。分譲マンションほどの華やかさはないが、明るく楽しそうである。

GLP          日本GLP(株)
プロロジスパーク     (株)プロロジス
ロジポート        ラサール不動産投資顧問(株)
ロジスティクスセンター  オリックス不動産(株)
グッドマンビジネスパーク グッドマンジャパン(株)
Landport         野村不動産(株)
DPL          大和ハウス工業(株)
MFLP         三井不動産(株)
SOSiLA        住友商事(株)
ロジクロス        三菱地所(株)
LOGI’Q       東急不動産(株)
T-LOGI        東京建物(株)
LOGiSTA      阪急阪神不動産(株)

ちなみに、ロジスティクス(logistics)とは、物流の管理・最適化のための業務を指し、元々は「兵站(へいたん)」すなわち、戦場における後方支援、兵器・食料等の補給活動のことである。

ところで、倉庫業者は、寄託を受けた荷物を責任もって保管するなら、どこの倉庫で保管しようが構わない。〇〇倉庫第3号であっても、荷主には関係ない。とすればブランド化は荷主のためではない。一体誰のためなのだろうか。

一つは従業員のためだ。「〇〇倉庫第3号で働いています」というよりは「ロジポート〇〇で・・」という方が聞こえがよい(もちろん実際に労働環境もよい)。それを雇用するテナントにとってもありがたい。そしてもう一つは前述の投資家のためと考えられる。投資家は「〇〇倉庫第3号」より「ロジポート〇〇」に投資したくなるに違いない。


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