BRIEFING.59(2003.7.10)

最有効使用と標準的使用の概念

不動産鑑定評価における「最有効使用」と「標準的使用」とは、不動産の有効使用の程度による区分ではない。「個々の不動産についての概念」と「地域についての概念」との違いである。一般の日本語として素直にとらえた場合と異なることから、しばしば誤解されているケースが見られる。

「対象不動産の標準的使用は・・・」あるいは「近隣地域における最有効使用は・・・」といった言い方は誤りである。「最有効使用」は個々の不動産について判断され、「標準的使用」は地域(または地域における標準画地)について判断されるものである。

ある土地の「最有効使用」とは、その土地の「効用が最高度に発揮される可能性に富む使用」を言う。そしてそれは、現実の社会経済情勢の下で客観的に見て、良識と通常の使用能力(決して特別な使用能力ではない)を持つ人による合理的かつ合法的な最高最善の使用方法に基づくものであり、地域における「標準的使用」を標準とし、対象不動産の個別性や、一般的要因・地域要因の変動により修正されたものと言えよう。

ある土地の「最有効使用」が、その地域の「標準的使用」と異なる場合、その理由は次の2つ(重複する場合を加えると3つ)に分けられる。

@当該土地の個別性の存在・・・・・地積過小、間口狭小、不整形等。
A一般的要因・地域要因の変動・・・事務所需要の減退、用途地域の変更等。

たとえば、「標準的使用」が中高層事務所ビルの敷地という地域であっても、ある土地は面積が30uしかないことから、「最有効使用」は2階建店舗の敷地と判断されることもある。またある土地は数年前なら高層事務所ビルだが近年の事務所需給の緩和で、「最有効使用」は高層共同住宅の敷地と判断されることもある。

なお「最有効使用」には、上記の如く、土地のみについての判断と、すでに建っている建物をも含めての判断があることにも留意すべきである。


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