BRIEFING.006(2001.10.15)

不動産投資信託の目論見書に見る鑑定評価額

2つの投資法人、ジャパンリアルエステイト(JRE)と日本ビルファンド(NBF)による不動産投資信託(Jリート)が、ともに9月10日、東京証券取引所に上場された。これに先立ち両者はそれぞれ関東財務局長宛に有価証券届出書(目論見書)を提出している。この中には「原資産」である不動産(主にオフィスビル)の鑑定評価額が、各不動産毎に記されている。

その鑑定評価額の決定方法について、両目論見書は、次のように説明している。

●JRE
「原価法及び収益還元法(直接還元法)を適用し、評価対象不動産が投資採算性を基準として投資判断を行う機関投資家等の投資対象となり得る不動産であり、投資採算性が重視されて市場において価格が形成されていると認められるため、収益価格を採用して鑑定評価額を決定しました。原価法による積算価格は収益価格を検証するための指標として活用しています。」

●NBF
「テナント入居中という現況を踏まえ、積算価格を検証手段として、収益価格を中心に不動産鑑定評価額を決定しています。」

JREにおける説明の方が丁寧ではあるが、NBFにおいても、テナント入居中であるからその価格はそこから生ずる利益への期待、すなわち投資採算性によって決まるということで、言わんとしていることは同じであろう。

ところで、JREにおいては各不動産について積算価格と収益価格とを表示した上ですべて収益価格をもって鑑定評価額としているが、NBFについては積算価格・収益価格の表示がなく、鑑定評価額のみの記載となっている。

またJREにおいては直接還元法を採用(対象不動産の標準的な単年度の収益を適切な還元利回りで除するもの。多年度の収益と転売予想価格から求めるDCF法は採用していないことが分かる)したことを明記しているが、NBFにおいては「収益価格」との記述しかなく、どのような収益還元法を採用したのか不明である。

採用した還元利回りはいずれの目論見書にも開示されていない。

投資家は、結果である鑑定評価額よりも、むしろその過程である収益還元の方法、将来の賃料や空室率の見通しとその判断根拠、還元利回り等に興味があるのではないだろうか。


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