BRIEFING.62(2003.9.11)

土地利用についての法規制と地価水準

土地の利用については、地域によって様々な法規制がなされている。そして開発・建築等は、その地域のすべての規制に適合するように行われなければならない。

一般に、これらの法規制が厳しいほど、その地域の地価水準は低いと考えられている。市街化区域よりも市街化調整区域、第一種中高層住居専用地域よりも第一種低層住居専用地域、風致地区でない地域よりは風致地区、その方が地価水準が低いというわけである。

では、これらの法規制の有無が、地価水準にどの程度の格差を生じさせるであろうか。先般、このような主旨のご質問をいただいた。規制の種類毎に減価率を判断してほしいということである。これに対し、概ね次のようにお答えした。

●行政的要因の異なる地域どうしの比較は困難である。

地価は地域要因が同一または類似した地域毎に形成されるものであるから、そもそもこのような比較はできるだけ避けるべきものである。とは言うものの、鑑定評価の実務上、行政的要因の異なる取引事例と対象不動産とを比較せざるを得ない場面は多い。そこで次のように続けた。

●宅地造成等規制区域、河川保全区域等は、逆に地域の安全性を高めるとも考えられる。
●地域住民が作る地区計画、建築協定等は、下落を容認したものとは思えない。

すなわち、規制がすべて地価水準を下落させるものではないということである。とは言うものの、地価水準を下落させる規制が多いのも確かである。そこで次のように続けた。

●下落の程度は様々で、当該地域の土地の標準的使用を阻害する程度による。
●当該法規制が緩和・解除される可能性を勘案する必要がある。

もともと一戸建住宅の需要しかない地域において、第一種低層住居専用地域と第一種中高層住居専用地域とでどの程度違うかと言われても、ほとんど差はなかろう。しかしこれが駅前なら影響は大きい。また、市街化調整区域と言っても、開発が許可される可能性は様々である。

地価水準の格差は相対的なもので、あの地域に対してこの地域はどうか、この地域の規制をこう変えたとすればればどうなるか、という具体的な比較の結果としてしか表現し得ないのではないか。


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