BRIEFING.64(2003.10.9)

不動産に帰属する適正な収益(2)

賃貸ビル・マンションにおいては、前回、@〜Bの理由により「不動産に帰属する適正な収益」が求めやすいことを述べた。

だが、経営者・運営者の関与が限定的(@)とは言っても、その関与が収益性を左右することはもちろんである。

一見「不動産に帰属する適正な収益」が大きい不動産であっても、実はその大部分が卓越した経営手腕によるものであり、その不動産が売却されて経営者が変わってしまえば並の純収益になってしまうかもしれない。また、「不動産に帰属する適正な収益」がマイナスのように見えても、実は経営のまずさがその原因で、経営者が変わればそこそこの純収益を生み出すかも知れない。

その点、所有と経営・運営(プロパティーマネージメント)とが完全に分離している場合は、はっきりする。経営者やプロパティーマネージャーにその貢献度に応じた分配分が支払われる可能性が高いからである。

その結果、「不動産に帰属する適正な収益」は明確となろう。

但し、プロパティーマネージャー等が貢献度を越えた分配分を取ったり、短期的にのみ実現しうる純収益をもとに分配分を査定したり、関連会社の利益を優先して純収益を圧迫したりした場合、「不動産に帰属する適正な純収益」はゆがめられることになる。

ビル・マンションに係わる主体を、収益の源泉に着目して3つに分離すると次のように分けられる。そしてAとB、BとCとの関係が固定的でなく、相互に選択・変更でき得る場合、Aの利益である「不動産に帰属する適正な収益」があぶり出されてくるであろう。

A.不動産の所有者
B.不動産の経営・運営者
C.不動産の使用者(賃借人)

さらに、その判明した純収益と当該不動産の危険性・流動性等を、他の投資先のそれと比較考量し、A自身が流動的に交代してゆく場合、当該不動産の適正な価格が明らかになってくるであろう。


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