BRIEFING.74(2004.6.10)
収益物件の3つの利回り
賃貸用ビル、マンション等のいわゆる収益物件の広告には、一般に取引利回り(粗利回り)が表示され、それが収益性の目安とされている。テナントの出入りや賃料の増減額もあるので、その時の収益が安定的・標準的なものとは限らないが、求めやすく明快な利回りである。
但し空室の賃料まで収益としていないか注意が必要である。現に空室があるということは今の賃料水準が高すぎるという場合が多く、仮に満室を想定するとしても、想定賃料は実際に貸せる賃料でなければならず、入居中の賃料も減額改定を想定しておく必要があろう。
しかしいずれにしろ、不動産の収益性は、収益から費用を差引いた純収益(利益)で測らなければならない。ところが、この費用にも変動がある上、その範囲の認識には主観や恣意性も介在しがちで、求められる純収益利回りは明快とは言いにくい。
さらに、純収益利回りには、減価償却費控除前のものと、控除後のものとがあり、混乱しやすい。
これらの利回りがどの程度違うか、次の例で試算してみる。
●総収益 60,000千円/年・・・@
●総費用 減価償却費除く 20,000千円/年・・・A
減価償却費含む 30,000千円/年・・・B
●売買価格 500,000千円 ・・・C
取引利回り = @ ÷ C = 12%
償却前純収益利回り=(@−A)÷ C = 8%
償却後純収益利回り=(@−B)÷ C = 6%
また、これらの利回りも永久ではなく、(地価が安定していても)転売時の価格は維持されもない(但し償却後純収益利回りは建物の減価を織り込んでいると考えられる。BRIEFING.42参照)。建物の残存耐用年数、建替えの費用及び期間等と関連づけて検討する必要がある。
この他、賃料の前払いや敷金残高、その他賃貸借契約の内容にも留意が必要である。また、入居しているテナントが“サクラ”で、売買後すぐ退去、という悪質な例もあると言う。利回りだけで判断してはならない。