BRIEFING.79(2004.11.15)

調達が行われていない市場における積算価格の意義

ゴルフ場の再調達原価は、土地30億、造成30億、建築30億、その他10億、合計100億円といったところが目安であろう。そして500万円の会員権を2,000人に売って即回収という目論みが可能であった。

今日、ゴルフ場は10数億〜数億円で取引されている。預託金債務の取扱いが様々であるため、一概には言えないが、建物の簿価にも満たない額である。

このような状況下において、新たに山林を取得してゴルフ場を作ろうなどという人が現れないのは言うまでもない。現にゴルフ場を100億円かけて調達しようという人がたくさん居てこそ、ゴルフ場は100億円なのである。

都心回帰の下、遠隔地の団地においても似たような状況が生じている。

住宅を新築しようなどという人はまれで、築10年程度の一戸建住宅(土地付き)が、土地はただ、または建物はただ、と考えてよいような価格で取引されている。

たとえば、土地200u、建物延べ120u(築10年)が900万円といった具合である。建物の新築単価は15万円/u、築10年で半値とし、土地のみの価格は4.5万円/uとして、次の試算を試みる。

@建物の価格を基礎に土地の単価を求めると・・・
(900万円−120u×15万円/u×50%)÷200u=0円/u
A土地の価格を基礎に建物の単価を求めると・・・
(900万円−200u×4.5万円/u)÷120u≒0円/u

いずれも現実的でない。

B調整して土地・建物の単価を求めると・・・
(900万円−120u×15万円×20%)÷200u=27,000円/u
(900万円−200u×27,000円/u)÷120u=30,000円/u

と、いったところか。常識的な減価修正では追いつかない。

不動産鑑定評価における積算価格は、再調達原価に減価修正を行って求められる。しかし現に調達が行われていない市場において、積算価格は無意味である。


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