BRIEFING.82(2004.12.13)

修繕費は何に依存して決まるか?

不動産鑑定評価において、賃貸用不動産の年間修繕費を査定する場合、次のいずれかに一定の係数を乗ずることにより求めるのが一般的である。

(ア)年間総収益
(イ)建物再調達原価
(ウ)建物積算価格

修繕費は概ね建物の規模に比例し、建設物価に連動するものと考えられることから、これらを反映する(イ)に依存して決定するのが最も妥当と思われる(BRIEFING.26参照)。

(ア)説なら同じ建物であっても賃料の水準(地価の水準を反映する)によって修繕費が異なってくるという矛盾を生ずる。但し収入の一定割合を目安に修繕を行っていこうとうい経営方針もあるであろうから一応の説得力は認められる。

(ウ)説なら建物が古くなるに従い修繕費が減少してゆくという結果になり、残存耐用年数が残り少なくなれば極端に低額の修繕費となってしまう(残存耐用年数の判定の誤りとも考えられるが)。古くなれば総額をにらんでそれなりの率にすれば良いとの反論もあろうが、それならば最初から総額で査定すればよい。

さて、最も妥当と考えられる(イ)説であるが、建物の規模や時の建設物価にだけではなく、建物の品等にも比例してしまう点は欠点と言えよう。安物の建物より、質の高い建物の法が修繕費が高いとは考えにくい。一般には安価な塗装より高価な塗装の方が長持ちするし、より高価なタイル貼り、大理石貼りならより長持ちする。その結果、修繕費は安くなると考えられる。

しかし一方で、形状が複雑であるために単価が高くなったものについては、修繕費もそれに応じて高くなると考えてもよいだろう。

鑑定評価の実務上、時間的にもコスト的にも制約があり、十分なデータもない中で、長期安定的な年間修繕費を査定する必要がある。根拠ある算定方法と、乗ずべき係数の判定方法の早期確立が望まれる。


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