BRIEFING.87(2005.5.12) 

協議なき継続賃料の最終合意時点の認識

継続賃料の鑑定評価の各手法を、正常賃料または従前賃料との関係の有無によって整理すると、次表の通りとなる。

  正常賃料 従前賃料
差額配分法   ○   ○
利回り法   ×   ○
スライド法   ×   ○
賃貸事例比較法   ×   ×

そして、従前賃料と関係のある手法においては、その賃料のみならずそれがいつ決定・合意(または実現)されたものであるかも重要である(BRIERFING.69参照)。いわゆる「最終合意時点」がこれらの手法の試算賃料に影響するからである。

建物の賃貸借契約の期間はたいてい2年間または3年間程度で、その更新を繰り返してゆく。そして、経済の状態や目的物の状況の変化により、期間中に賃料の増減額を請求することが一般的には可能である。しかし通常は更新の際に賃料の改定が行われることが多い。

10年、20年といった長期の契約でも、賃料の増減額請求はいつでも可能であるが、2年または3年程度毎に協議の上、賃料の改定をすることができる旨、約定されていることが多い。

では、改定が妥当である賃料であったにもかかわらず、更新時または約定の時期に、何らかの事情で協議が行われず、改定されなかった場合、「最終合意時点」をどのように認識すべきであろうか。次の2つのことが考えられる。

@更新時または約定の時期に新たな暗黙の合意(再合意)があった。

A協議なくして合意とは言えないので最後に改定された時点。

申し入れをしなかった理由には、忘れていた、面倒だった、恐ろしくて言い出せなかった、あきらめていた、次回にまとめて改定するつもりだった、どうしたらよいかわからなかった、相手が病気だった、など様々であろう。このような事情も斟酌する必要があろう。

それとなく打診してみたが、全く相手にしてもらえなかった、というのも協議とは言い難いだろう。

また、協議はあったが結局賃料を据置きとした場合はどうか。早急に議論すべき論点である。 


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