BRIEFING.89(2005.5.30)
支払賃料と実質賃料
不動産の鑑定評価に当たって求める賃料は、支払賃料と実質賃料とに分けられる。
支払賃料とは、毎月または毎年定期的に借主から貸主へ支払われる賃料をいう。
実質賃料とは、これに敷金等の運用益、ならびに権利金等の運用益及び償却額を加算したものをいう(この他、共益費等のうち実質的には賃料と認められる部分があればこれも加算されるがここでは省略する)。
これを式で表せば次の通り(月額)である。
支払賃料 +(敷金等×運用利回り + 権利金等×年賦償還率)÷12 = 実質賃料
今、権利金等がなく、敷金等のみであったものとすると、実質賃料が20万円/月となる支払賃料と敷金との組合わせは次の通り考えられる。なお、運用利回りは5%とした。
支払賃料 (円/月) |
敷金 | 運用益 (円/月) | ||
(ヶ月分) | (円) | |||
ア | 200,000 | 0 | 0 | 0 |
イ | 196,721 | 4 | 786,885 | 3,279 |
ウ | 193,548 | 8 | 1,548,387 | 6,452 |
エ | 190,476 | 12 | 2,285,714 | 9,524 |
オ | 100,000 | 240 | 240,000,000 | 100,000 |
常識的な敷金の範囲で、これらは等価と扱ってよいであろう。
しかし、アの組合わせでは、需要はあっても供給が少ない。オなら、供給はあっても需要がないだろう。それは、アでは賃借人側が賃料債権に対して、オでは賃借人側が敷金返還請求権に対して、大きな不安を持たざるを得ないからである。
では、もしこの不安を適切に貨幣価値に置換え、それを支払賃料に加減して、完全に等価となる支払賃料と敷金との関係を見出すことができるであろうか。
おそらく、現に極端な組合わせの賃貸借がほとんど見られない以上、それらは、賃貸人にも賃借人にも不安のある魅力のない商品ということであろう。需給の接点は見出せないだろう。