BRIEFING.009(2001.11.05)

4号営業の営業所の流通

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律では、風俗営業と、性風俗特殊営業とに対する規制等が定められている。後者には、店舗型・無店舗型・映像送信型の3つがあり、店舗型以外は平成10年の法改正により新たに法規制の対象となったものである。店舗型には、6種類のものが定められており、このうち第2条第6項第4号に該当するのがいわゆるラブホテルの営業であり、これらは「4号営業」(法改正以前は第3号であったため「3号営業」)と呼ばれている。

この「4号営業」は、公安委員会への届出制であるが、昭和62年施行の改正法により、一定の施設(官公庁、学校、図書館等)の周囲200m内が禁止区域とされ、さらに都道府県の条例で、病院、公民館等の周囲をも禁止区域とする等規制の強化が進められている。

しかし「これらの規定の施行又は適用の際、現に前条第1項の届出書を提出して店舗型性風俗特殊営業を営んでいる者」については適用されない(第28条第3項)。したがって、現在もこれらの禁止区域内に多くの4号営業の営業所が存在するのである。

これらの営業所が集積している地域の多くは昭和62年以前から形成されていた地域であるが、これらの中にはその営業所のすべてが既得権に基づく営業所であるという所が多い。

ところで、これらの既得権には相続が認めれらていないため、個人営業の場合、禁止区域における営業はやがて消滅してゆく。しかし法人なら、建物が使用に耐え得る限り営業可能ということになる。代表者の変更、株主の変動は問題にならない。そこでこれらの業界では改正法施行直前に多くの個人営業が法人営業に変更されたという。

しかし、法人化したところでこの既得権の譲渡が認められないため、その営業所(多くはそれ用の特殊な作りである)の不動産としての流動性も極めて低い。そこで改正法施行後は、これらの営業所を会社ごと売却することが行われるようになっている。これにより、既得権を失わずに営業所の取引が行われているのである。

改正法施行直前には、その流動性をさらに高めるため、複数所有してる営業所を一棟毎に別々の法人所有・営業に変更することが多く行われたと聞く。そして現にその流通も活発に行われているようである。建築基準法でホテル・旅館の建築をしてはならない用途地域への変更により生じた既得権についても、同様の流通が認められる。不動産の証券化の先駆といえば誉めすぎであろうか。

さて、禁止区域等に存するこれらの営業所(多くは収益性が高い)の不動産としての価値はどのように把握すべきだろうか。もし不動産として売却され、既得権を失えば、その建物の利用価値は極めて低いのだ。


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