BRIEFING.91(2005.6.13)

地代の基礎価格

地代の基礎価格は、地代を求める際の基礎となる価格で、当該借地契約を所与とする対象不動産の最有効使用を前提として把握される価格である。この基礎価格に期待利回りを乗じたものに必要諸経費等(主として固定資産税等)を加算して求められるのが積算賃料である。

では、地代の積算賃料を求める際の基礎価格(いわゆる契約減価はないものとする)は更地価格とすべきか、底地価格とすべきか。不動産鑑定評価においては両方の考え方が併存する。

底地とは、建物所有目的の借地権が付着している土地のことをいうが、その価格は、更地価格に対し、通常、商業地で10〜60%、住宅地で40〜60%程度であり、財産評価基本通達に基づく路線価図に示されている割合、またはそれより10%程多いのが一般的だといわれている。地代の水準、残存期間、賃借権か地上権か等にも左右される。

いずれにしろ更地価格と底地価格の差は大きく、同じ期待利回りを採用した場合、そこから求められる積算賃料の差も大きくなる。

それにも係わらず両説が併存する背景としては、次のことが考えられる。

底地を底地としての価格で取得した人は、底地価格を基礎価格とした賃料を収受することで満足する(底地説)。しかし新規に土地を賃貸借に供する人は更地価格を基礎価格とした賃料を収受できる見込みがなければこれを行わない(更地説)。

実務上は、更地価格には更地なりの期待利回りを、底地価格には底地なりの期待利回りを、それぞれ乗じている。

さて、そもそも底地価格とは、更地価格を元にしつつ、次のことに起因して生じたものと考えられる。

@期間中の地価上昇に対する賃料の遅効性・粘着性。
A契約時の権利金の授受(所有権の一部譲渡に類似)。
B担保としての不完全性、譲渡の困難性等。

とすれば、積算賃料は、新規地代の試算賃料のひとつであるから、賃貸借の継続によって生ずる@の要因は無視し、ABの要因にのみを考慮した「新規底地価格」のようなものを想定する必要があろう。これらは更地を新規に賃貸した瞬間に生ずる減価要因である。

底地説、更地説、とも違う「新規底地説」と言ってもよいだろう。

なお、Aの運用益・償却額を実質賃料(BRIEFING.89参照)に組込めば「新規底地価格」に考慮する必要はないだろう。また契約減価があれば(たとえば契約により、更地の最有効使用を実現できないような使用方法の制限がある場合)、考慮すべき要因となるだろう。


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