BRIEFING.93(2005.6.27)

「船場建築線」の根拠と後退部分の現状

大阪市中央区の船場地区には「船場建築線」と言われる道路境界線の指定がある。

当該境界線による後退部分は、建築基準法上の道路であり、建物の敷地とすることはできず、容積算定の基礎に含めることはできない。

これは、市街地建築物法(大正9年12月1日施行)第七条但書に基づき、大阪府が告示(昭和14年4月)により指定したものであり、同法が、建築基準法の施行(昭和25年11月23日)と同時に廃止された際、建築基準法附則により、同法42条1項5項の「位置の指定」とみなされたものである。条文等に当たってみた。

●市街地建築物法 第七条
「道路幅ノ境界線ヲ以テ建築線トス但シ特別ノ事由アルトキハ行政庁ハ別ニ建築線ヲ指定スルコトヲ得」

●通称「船場」ノ区域ニ於ケル市街地建築物法第七条但書ニ依ル建築線指定ニ関スル件(大阪府告示)
「市街地建築物法第七条但書ニ依リ通称「船場」ノ区域ニ於ケル建築線ヲ別紙図面ノ通リ後述指定ス但シ図面ハ当府及所轄警察署、大阪市役所ニ備ヘ置キ一般の縦覧ニ供ス」

●建築基準法附則2
「2.左に掲げる法律及び命令は廃止する。
一 市街地建築物法(大正八年法律第三十七条)」以下省略。

●建築基準法附則5
「市街地建築物法第七条但書の規定によって指定された建築線で、その間の距離が四メートル以上のものは、その建築線の位置にこの法律第四十二条第一項第五号の規定による道路の位置の指定があったものとみなす。」

さて、これによる後退部分は建築基準法上は道路であっても、道路法上は道路でなく、所有者の自主管理が原則である。したがって、敷地ごとに整備状態が異なり、一見、幅の広い犬走りといった具合である。

駐車場にされていたり、植木や看板が置かれていたりというところも多い。せっかく歩道に供されていても、隣地との境界にはブロック塀というところも見られるのが残念である。

なお、このような建築線は船場地区には限らない。ある住宅地域においては、建物の竣工検査後、後退部分を庭に取込んでしまうことが黙認されていて、現況の道路幅は、市街地建築物法の時代から拡幅を見ないままである。何らかの対策が望まれる。


BRIEFING目次へ戻る