BRIEFING.95(2005.7.11)

京都・鴨川の納涼床と河川の占用

京都・鴨川の納涼床(川床)は夏の風物詩である。片側を川に面した飲食店が、鉄骨の櫓を河川敷の上にはみ出して組み、店を広げて営業する。主にハモ料理等の料亭が多い。屋根は禁止されているから雨天時は使用できず、日中は暑くて使えない。

櫓は、その日本的雰囲気から、一見木造のように見えるが実は鉄骨造で、防災上の観点からそうでないと許可されない。そしてシーズン・オフには解体されて倉庫に収納されるようになっている。

ところで、鴨川は京都府が管理する一級河川である。その国有の公共物である河川区域内に鉄骨の仮設工作物を立てて、事業者が営利目的に使用するなど、河川管理者としては許可し難い行為である。

国土交通省の河川敷地占用許可準則に照らしても原則的には許可されるべきものではない。

しかしこれらの店は、毎年「鴨涯保勝会」という団体を通じて河川の占用許可を府に申請し許可を得ている。府は河川管理者の立場から許可には前向きではないが、京都市は観光振興の立場から、これを後押ししているとのこと。

占用使用料は月額u単価で決められているがかなり高い。したがって許可を申請せず、歯抜けのように床がないところや、民有地内に納まる短い奥行の床しか出していないところもあってやや寂しい。

このような全国的にも異例とも言える許可が毎年なされる背景には、豊臣時代からとも、江戸時代からとも言われる、河川法施行(旧法は明治29年、新法は昭和39年)以前からの長い歴史がある。その歴史的・文化的経緯、また観光資源としての貢献を踏まえてのことである。

今の河川法など、最近の法律にすぎず、川床はそれよりはるか前からの習慣なんだという説得力のある(?)理屈もある。

戦災を逃れた京都では、「戦争で焼けた」といえばその戦争は応仁の乱(1467年)のことだという。そんな悠久の歴史の前には、河川法はつい最近のものでしかない。

川床が許可される店の土地建物は、希少性から高価で取り引きされる。しかしその価値の源は毎年の許可に基づく権利であり、不動産に付着した物件ではないと考えられる。


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