BRIEFING.021(2002.02.07)

短期賃借権と敷金返還債務

抵当権に遅れる短期賃借権(建物の場合3年以内)が競売不動産の買受人に対抗し得るとされているのは、その所有者の使用収益権と抵当権者の価値権とを調整した結果であると言われる。そして抵当不動産の差押え以降、短期賃借権の更新は買受人に主張できないと解される。

したがって次の2つの場合によって、短期賃借権を承継するか否かが決定されると言えよう。

@差押え後、買受けまでの間に契約期間が満了した場合
A差押え後、買受けまでの間に契約期間が満了しなかった場合

@の場合、短期賃借人は買受人に契約の更新を主張できない。Aの場合、契約の更新は認められないものの、契約期間満了までの間は買受人に対抗することができる。

したがってAの場合、短期間とはいえ、一旦は賃借権を引き受けることとなる。長期の賃料前払いがある等の詐害的な賃貸借でなく、通常の賃料が授受されるのであれば、しばらく(期間満了まで)自己使用できずとも買受人が受認すべきであろう。

しかし、一旦賃借権を引き受けた以上、敷金返還債務も承継することとなる。

敷金を返さなくてはならないか(返してもらえるか)否かは買受人・賃借人にとって大問題である。異常に高額な敷金の授受を偽装している場合は別として、通常の賃貸借においても賃料の数ヶ月分から1年分程度の敷金の授受は普通であろうし、バブル期の店舗の場合には60ヶ月分、100ヶ月分というものも珍しくない。

そして、これを返さなくてはならないか(返してもらえるか)否かという大問題が、差押えと更新期のタイミングによって左右されるところがまた問題である。しかも、短期賃貸借はいわゆる占有屋等だけが利用する特殊なものではなく、建物の賃貸借においてごく普通に用いられている契約なのである。


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