BRIEFING.334(2014.05.22)

不動産鑑定評価は市場の先導者たるべきか(1)

国交省は去る3月「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」を公表した。

中古戸建住宅の取引市場における評価では、法人税法上の耐用年数(木造住宅は22年)等を参考にして、住宅の状態に関わらず、一律に築後20〜25年程度で住宅の市場価値が0とされる扱いが一般的という現状を踏まえ、その改善を目指したものである。

確かに、従来の評価が法人税法上の法定耐用年数の考え方を取り入れていることは間違いなさそうだ。しかしこれには残存割合(10%(5%まで償却可能))があったはず(もっとも平成19年には備忘価格の1円まで償却可に)だがこれは取り入れられていない。

また、家屋の固定資産税評価においては、耐用年数(経年減点補正率が下限となる経過年数)は、概ね法人税法上の法定耐用年数と同じ(若干長い)であるが、残存価額(経年減点補正率の下限)は20%もある。これは市場からの批判が多い。

市場は10%または20%という残存価額を無視し、市場の感覚に合う部分(耐用年数)だけを柔軟に取り入れてきたと考えられる。

決して強制されたわけでもなく、自然に市場に定着した考え方である。また、法定耐用年数が個別性を捨象して普遍的に総括したものであることは確かだが、一般的合理性は有すると評価されている。

この指針には「評価の現状を改めるため」「本来あるべき住宅の価値」といった言葉が並び、もっと価値があるはずだ、との先入観が透けて見える。高く評価することが目的ならいただけない。

安さが魅力の中古市場に、いらぬお節介で水を差すことにならねばよいが。

この見直しは、取引市場を誘導するのみならず、不動産鑑定評価基準にも反映される見込みである。そこには、求めるべき価格は「あるべき価格」だとの考え方があるように思われる。

不動産鑑定業界には、求めるべきは「あるべき価格」か「ある価格」(または「あるがままの価格」)かという論争が古くからあった。

そして平成14年の不動産鑑定評価基準改定で「ある価格」説支持の立場が明確になったことで一応の決着を見た言われる。正常価格の定義に「現実の社会経済情勢の下で・・・」と加えられたことがそれを示唆している。

だが、今回の見直しには「あるべき価格」説への回帰が感じられる。しかし評価は市場の先導者たるべきなのか。個別性を把握した上で、市場の判断を仰ぐ謙虚さは必要ないのだろうか。

評価は市場の主(あるじ)か、市場の僕(しもべ)か。ザイン(Sein、実態)かゾルレン(Sollen、理想)か、熱い論争の再燃が予想される。


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