BRIEFING.373(2015.09.14)
不動産の試算価格と鑑定評価額(3)
前回、前々回と3種の不動産(@〜B)を想定して、その不動産鑑定評価における試算価格を求めてきた。今回は鑑定評価額を決定する。
なお、@は超都心の超高層マンションの最上階1戸、Aは都心の8階建賃貸1Rマンション1棟、Bは郊外の2階建賃貸アパート1棟であるが、それぞれの概要及び試算価格決定の過程は、前回及び前々回のBRIEFINGをご参照いただきたい。
さて、@については試算価格が大きくばらついた。平均を取るわけにもいかない。そこで思い出すべきは「市場参加者の目線」である。超都心、超高層、最上階、これを取得する人は積算価格は意識しない。賃貸して利益をということも考えないから収益価格も意味をなさない。そうすると重視すべきは比準価格である。市場参加者は、あっちのマンションの最上階はいくらだったからここならこれくらい、あるいは、そのマンションの中間階がいくらだったから最上階はこれくらい、と価格を査定するはずである。これはまさしく取引事例比較法、求められる価格は比準価格である。鑑定評価額は4億円でよかろう。
Aの市場参加者は収益性を意識して価格を査定する。収益価格重視でよい。おまけに積算価格も同額であるから、別の面からも検証されたことになる。鑑定評価額は4億円だ。
Bの市場参加者も目的は収益だ。収益価格重視でよい。積算価格は高めだが、このような開発はもともと土地を持っていた人が相続税や固定資産税を下げる目的で行われることが多い。市場参加者の眼中に積算価格はない。鑑定評価額は4億円でよかろう。
これをまとめると下表の通りである。
| 積算価格 | 収益価格 | 比準価格 | 鑑定評価額 | |
| @ | 2.0億円 | 1.6億円 | 4.0億円 | 4.0億円 |
| A | 4.0億円 | 4.0億円 | − | 4.0億円 |
| B | 5.0億円 | 4.0億円 | − | 4.0億円 |
もっとも、俺ならこう決めるという別の考えをお持ちの方もおられよう。それは評価主体の個性の他、頭に描いている地域の状況、市場環境の認識の違いによってももたらされる。
さて、貴殿が@〜Bのいずれかを取得するならどれを選択するだろうか。それぞれの物件や周辺環境をを想像しながら考えてほしい。
@は値上がりしそうだがバブルの香りもする。Aは堅そうだが1Rの供給過剰感も否めない。Bは土地が広いのが魅力だが稼働率や賃料の低下が心配・・・。実に悩ましい。とすれば鑑定評価額は同額で間違いないだろう。