BRIEFING.439(2017.07.31)

建物の経年劣化と積算賃料

新規賃料を求める不動産鑑定評価の手法には、積算法、賃貸事例比較法、収益分析法等がある。このうち、積算法は、対象不動産の価格時点における基礎価格を求め、これに期待利回りを乗じて得た額に必要諸経費等を加算して試算賃料(積算賃料)を求める手法である。収益賃料(収益分析法による試算賃料)が賃借人側の賃料と言われるのに対し、積算賃料は賃貸人側の賃料と言われている。

1億円で取得した土地に1億円で建物を建て、それを賃貸するならその合計額(基礎価格)に期待する利回り(期待利回り。たとえば年6%)を掛け、維持管理修繕等に必要となる諸経費(必要諸経費等)を別途上乗せする、という考え方(下式参照)であり、妥当な考え方だろう。但し実際に成約する賃料は、市場の洗礼を受けて下方修正せざるを得ない場合が多い。

(土地1億円+建物1億円)×6%+必要諸経費等5百万円=17百万円/年
 17百万円 ÷ 12ヶ月 ≒ 142万円/月

さて、このビルが新築ではなく、築10年であったとすればどうだろう。

建物価格を躯体(割合70%、耐用50年)と設備(割合30%、耐用15年)に分けて定率法により減価修正し、他の条件変えずに試算してみた。さらに同様に、築20年、30年、40年としてみると、積算賃料は下表の通りとなる。

経過年数  0  10  20  30  40
基礎
価格
土地 百万円 100 100 100 100 100
建物 百万円 100  66  42  28  14
期待利回り 年利 6.0  6.0 6.0 6.0 6.0
必要諸経費等 百万円   5   5   5   5   5
積算賃料
 
万円/年 1,700 1,496 1,352 1,268 1,184
万円/月  142  125  113  106   99

土地の価格は不変と見ても基礎価格(土地+建物)の下がり方は概ね妥当だろう。しかし賃料はもう少し維持されるように感じられる。その原因は、次の様に考えられる。

@賃料は不動産の一定期間(年や月)の価値に対応する。
A価格は不動産の使用不可能となるまでの各期間の価値の現価の総和に対応する。

賃料も建物の経年劣化により逓減してゆくことに間違いはないが(上記@故に)建物があと何年使えるかということに直接は関係がない。一方価格は、賃料の逓減に加え(上記A故に)残存使用可能期間の逓減という2つの下落要因を抱える。それ故(土地分は下落しないと見ても)価格の下落は賃料の下落以上にその程度が大きくなりやすいのである。

上表では期待利回りを一定としたが、経年劣化とともに上昇させれば賃料の下落は緩和され、妥当な賃料が査定される。経年劣化が進むほど期待利回りが上昇、というのには違和感を持つ人もあろうが、賃料から価格を求める場合の還元利回りに準じ、古くなるほど上昇する傾向があることは間違いない。古くなっても賃料は価格ほどは下がらない、価格の割に賃料には期待できるという訳である。


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