BRIEFING.620(2024.06.28)

2つの収益還元法における収益費用項目の集計方法の相違

不動産の価格を求める手法の一つ、収益還元法には次の2つがある。

<直接還元法>
一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法
<DCF法>
連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法

純収益は「総収益から総費用を控除」して求められるが、対象不動産が賃貸用不動産である場合、その総収益は「一般に、支払賃料に預り金的性格を有する保証金等の運用益、賃料の前払的性格を有する権利金等の運用益及び償却額並びに駐車場使用料等のその他収入を加えた額」とされる。総費用は「減価償却費、維持管理費(維持費、管理費、修繕費等)、公租公課(固資税、都計税等)、損害保険料等の諸経費等を加算」して求められる(不動産鑑定評価基準・総論第7章第1節W参照)。

さて、証券化対象不動産に係るDCF法の場合は、前述のものとは異なる項目分けが義務付けられており、その中に「資本的支出」が登場する。また以下の@〜Bの小計項目も用いられる。

「資本的支出」とは「対象不動産に係る建物、設備等の修理、改良等のために支出した金額のうち当該建物、設備等の価値を高め、又はその耐久性を増すこととなると認められる部分に対応する支出」(同基準・各論第3章第5節U参照)と定義されている。また、@〜Bの、総収益・総費用との関係は次の通りである。集計の方法に相違がある。

@運営収益  = 総収益 − 一時金の運用益
A運営費用  = 総費用 − 資本的支出
B運営純収益 =  @  −  A

最終的な純収益は、Bに一時金の運用益を加算し、資本的支出を控除して求められる。抜いていた2つを元に戻すことで、従来と同じ純収益になる訳である。

なお「資本的支出」は元々税法の概念であり、法人税法及び所得税法の基本通達にその定義が見られる。鑑定評価基準における定義はそれをほぼそのまま採用している。

この「資本的支出」や「運営〇〇」は直接還元法には取り入れられていない概念である。しかし、DCF法は、直接還元法を併用して検証することが求められており、どうせなら両手法の収益費用項目を一致させるべきではないだろうか。直接還元法においても「運営〇〇」を表示して悪くはなかろう。

実際、証券化に係るDCF法との整合性を重視し、実務上、それ以外のDCF法及び直接還元法においてもそれに倣って収益費用項目を設定する場合が見受けられる。

なお、証券化に係るDCF法の費用項目の1つ「修繕費」は、従来からの「修繕費」とはその範囲を異にする。その差が「資本的支出」とも考えられる。この点についてはまたの機会に検討したい。


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