BRIEFING.624(2024.10.21)

何とかならぬか、限定価格の定義

不動産の鑑定評価によって求める価格は、基本的には正常価格であるが、鑑定評価の依頼目的に対応した条件により限定価格、特定価格又は特殊価格を求める場合がある。

正常価格の定義は次の通りである(不動産鑑定評価基準第5章第3節Tの1参照)。

「市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢の下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価値を表示する適正な価格」

限定価格の定義は次の通りである(同節Tの2参照)。

「市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合又は不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離することにより、市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格」

正常価格の意味は、すぐ頭に入る感じがするのに、限定価格はどうだろう。大部分の方が理解に苦しむことは間違いない。そこで、その理解のため、まずは修飾語を削り取ってみる。

「併合又は分割に基づき市場価値と乖離することにより、市場が限定される場合における取得部分の市場価値を適正に表示する価格」

ここで、「・・・に基づき・・・と乖離する」に違和感がある。何が乖離するのかハッキリしないのだ。そこで、語順を変え、文言と読点(とうてん)を追加・削除して定義を次のように改める。

「市場性を有する不動産について、ある不動産を併合取得する又はある不動産の一部を分割取得する場合に、市場が限定され、正常価格と同一の市場概念の下において形成されるであろう市場価値と乖離して形成される、取得部分の価値を適正に表示する価格」

「・・・形成されるであろう市場価値」と乖離するのは「取得部分の価値」であることをハッキリさせた。少しは分かり易くなっただろうか。

次に、「・・・を表示する適正な価格」(正常価格)でなく「・・・を適正に表示する価格」(限定価格)なのはなぜか。前者には「適正な価格」があり得るが、後者にはそれがないから、という(屁)理屈があった様に記憶しているが、一緒でよいのではないだろうか。

また、そもそも限定価格は、特定の取引当事者以外の者には妥当しない価格である。そこに「市場」はあるのだろうか。この際、定義の「市場が限定され」は「市場参加者が特定され」に改め、限定価格という名称から見直すべきではないだろうか。

ネット上にも、限定価格の説明が見られる。大抵は理解困難な定義をそのまま述べた上で、例を示して図で説明するというのがお約束だ。確かに図で説明するとよく分かる。しかしできれば定義だけで理解できるようにしておきたい。何とかならぬか、限定価格の定義。


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