BRIEFING.632(2025.01.14)
「当面の間」定期化できない居住用借家
定期建物賃貸借の制度は「良質な賃貸住宅等の供給の促進に関する特別措置法」による「借地借家法」の改正によって同法第38条に定められた制度であり、2000年(平成12年)3月1日から施行されている。契約期間の満了により、更新されることなく確定的に契約が終了する制度であり、当初は画期的な制度と言われもしたが、当たり前と言えば当たり前と言うこともできる。
施行から早くも20数年が経過し、周知されてきたものと思われるが、実際の普及率は極めて低い。前述の「良質な賃貸住宅等の供給・・・」とは裏腹に、事務所ではかなり普及してきたものの、住宅では足踏み状態である。
アットホーム鰍フ調べ(「定期借家物件」の募集家賃動向2021〜2023年度)によると、同社サイトで登録・公開された居住用賃貸物件の、賃貸マンション・アパート全体に占める入居者募集戸数の割合は次の通りである。まだ大部分が普通借家であることが分かる。
| 東京23区 | 名古屋市 | 大阪市 | ||
| マンション | アパート | マンション | マンション | |
| 令和03(2021)年度 | 5.5% | 5.3% | 1.5% | 0.8% |
| 令和04(2022)年度 | 5.7% | 5.4% | 1.6% | 0.8% |
| 令和05(2023)年度 | 6.3% | 5.2% | 2.1% | 1.2% |
貸主にとって、建物がまだ新しいうちは普通借家でよかろう。しかし建替え(即ち立退き)を視野に入れなければならない頃になると、これではまずい。一度普通借家で賃貸してしまうと、借家人が合意してくれない限り、普通借家は普通借家のままだ。ただ、賃料を減額する等の条件で、借家人の合意を得て、少しずつ普通を定期に変更してゆくことはできるだろう。
ところが、2000年の改正法前からの普通借家は、たとえ両当事者の合意があっても(部屋を替わることなく)それを定期借家に切り替えることはできない。法改正からすでに20数年経過し、該当する契約はすでに些少だろうが、全戸定期化を阻む原因になっているものと思われる。
定期借家(定期建物賃貸借)制度の創設は、前述の特別措置法(平成11(1999)年12月15日公布)第5条の「借地借家法の一部改正」によるものである。同第38条に定められ「契約の更新がないこととする旨を定めることができる」という点がポイントだ。しかし、この特別措置法には、附則があり、その第3条には「・・・その賃貸借を合意により終了させ、引き続き新たに同一の建物を目的とする賃貸借をする場合には、当分の間、第五条の規定による改正後の借地借家法第三十八条の規定は、適用しない。」とされている。ポイントとなる38条が否定されているのだ。
同法成立時には、衆議院建設委員会において次の附帯決議が成されている。
「・・・居住の用に供する建物に関して既になされた賃貸借に対しては、当該賃貸借を合意終了したとしても、当分の間、適用されないことを、あらゆる方法を通じて周知徹底させ・・・・」
さて、「当分の間」が20数年とは長すぎる。ぼつぼつ見直して全戸定期化を実現し易くし、その実現により建替直前まで建物を有効に活用(空家も減少するだろう)した上で、建替えによって、新たに「良質な賃貸住宅等の供給」を図るべきである。