BRIEFING.634(2025.02.06)
3つの「残置物」問題(2)
出て行く賃借人が処分しようとしている動産の中には、まだ使えて捨てるのが勿体ないという物もある。例えば賃借人が自ら設置したエアコンやカーテンなどである。これらは、価値はあるものの、引っ越し先では使えない(無価値)かも、という宿命がある。例えばエアコンは、移設に費用がかかる上、ちゃんと動いていたのに移設したら潰れてしまったということもよくある。カーテンはサイズが合わずに使えないことが多い。
ならば賃貸人の承諾を得てこれらを残置し、次の賃借人に使ってもらえるなら、その方が資源を無駄にせず、社会的にも好ましいと考えられる。
しかし、そこには前回のBの問題がある。まず、このような残置物が誰の所有物か、ハッキリしておかねばならない。賃貸人か、前賃借人か、新賃借人か・・・。特段の約定がなければ、前賃借人から賃貸人がもらった物(賃貸人の所有物)と考えるのが普通で、それを含めて新賃借人に貸していると考えられる。そしてその修繕義務も、所有者である賃貸人にあるということになろう。
但しこれと異なる定めは有効だろう。
例えば、前賃借人から賃貸人に一旦所有権が移ったものの、賃貸借契約と同時に、賃貸人が新賃借人にそれを贈与したとする定めである。そうするとその修繕は賃借人が行い、潰れたときの処分、買換え等も必要に応じ賃借人が行うことになる。その旨もハッキリさせておく方がよい。
このような残置物がある場合、賃貸借契約書及び重要事項説明書には、その旨の記載があるはずであるが、単に「リビングのエアコンは残置物である。」とか「ガスコンロは残置物扱いとする。」としか説明されていない場合もある。「残置物」の意義が確定・周知されていない中、適切とは言えない説明である。
次に、このような「残置物」がある場合、賃借人が賃貸借契約を解除して明け渡す時に、その「残置物」を残置することは許されるだろうか。次の2つの考え方がある。
〇賃借人の所有物だから賃借人が撤去・処分しなくてはならない。
〇賃借人の所有物ではあるが残置し返却するのが「原状回復」。
勿論、あらかじめ決めておく、または明渡しに際に協議して決まればよいのであるが、そこまでの定めがなく、協議がまとまらない場合にトラブルになる。また、賃借人の所有で修繕も処分もやりますという契約になっていたものの、それ(例えばエアコン)が最初からあまり利かないとか、すぐ潰れてしまったとかいう場合、賃借人には「処分代だけ持たされて・・・」と不満が残る。
Bの「残置物」は、賃貸人が前賃借人の残置を容認した時点でその所有権を取得し、賃貸借物件に附属した設備として新賃借人に賃貸したと考えるべきであろう。
ただ、いわゆる「居抜き」(賃借人の所有物である店舗の空調・厨房等の設備を、新賃借人が前賃借人から直接譲り受ける)は定着した習慣であり、資源を無駄にしないという点で社会的にも好ましい制度である。食器や鍋釜まで譲り受ける場合もある。そうすると、Bの残置物も「居抜き」同様の仕組みによって、運用してゆくのも悪くないかも知れない。
@ABの3つの「残置物」問題を混同せず、それぞれの論点を整理して議論する必要がある。