BRIEFING.635(2025.03.17)

契約更新で残る「原契約の通り」の条項

普通建物賃貸借契約は、契約更新を繰り返すことによって長期間にわたる場合がある。そして更新時には、新たな期間と賃料を定めた覚書を作成するものの、その他については「原契約の通りとする」のが一般的である。その結果、今では無効な条項、時代に合わない違和感のある条項などが、現在の契約に残っている場合がある。

その点、定期建物賃貸借契約の再契約時には、新たな契約書を作成するので、最新のひな形が用いられると考えられる。

残っている古い条項としては、賃借人が賃料を2カ月分以上滞納すれば催告なく契約解除とか、賃借人が破産したら即契約解除とかいうのが多いが、これらは無効だろう(書いておいて賃貸人側に損はないが)。賃料が遅れたら賃貸人が鍵の交換をしてよいとか、明渡し後の残置物は賃貸人が任意処分してよいというのも許されまい。地震で使用不可能となった場合は敷金を返還せずに解約、というのも昔はよく見られた。更新料が賃料10ヶ月分というのも賃借人が消費者なら消費者契約法によって無効だろう。

電球、蛍光管の取り替えは賃借人負担で、というのはごく一般的な規定だが、これらは生産停止になりつつあるから、早晩在庫が尽きて市場からなくなってしまう。これでは賃借人に不可能を強いることになる。電球(または電球型蛍光灯)なら、電球型LEDを電球とみなしてその取り換えを賃借人負担とする解釈もできようが、直管の蛍光管ならば、器具ごとLEDへの取り換えを賃借人負担と解釈できるだろうか。この場合は賃貸人が賃貸人の負担で器具を交換というのが妥当なところだろうか。

では、その後にそのLEDの寿命がつきたら・・・。多くのLED器具は手軽に「玉替え」ができずユニットごとの取り換えが必要で、素人にはちょっと難しく、電球をクルクル回して・・といった感じではない。その取り換えの負担については、LEDユニットの価格が蛍光管より相当に高いこと、LEDの寿命が長いこと(賃貸借期間を越える場合もある)等を勘案の上、何らかの指針の策定が必要だろう。

次に、かなり古い賃貸借契約書に見つけた禁止事項に、面白いものがあったので紹介しておこう。用途は事務所である。

●高歌放吟すること。
高らかに歌を歌うまたは詩歌を吟ずることである。どちらも迷惑だがわざわざ書く必要があるのか。何度か注意してもやめないなら、信頼関係の破壊と解釈できよう。かつては若者が事務所に集まって労働歌や反戦フォークを歌った時代もあったのだろうか。だが、まさか詩吟をやるとは・・・。わざわざ書くぐらいだから昔はいたに違いない。今なら笑ってしまうが。

●貸室内で焚火をすること。
室内で焚火はなかろうと思うが・・・。かつてはエアコンなどなく、暖房は火鉢か石油ストーブ。それもなければ焚火でも、と考えるのもやむを得まい。暖炉や囲炉裏も焚火のようなもの。炭火の焼肉は焚火と線引きが難しい。寒さに耐えかねて案外やる者が多かったのかも知れない。

契約更新時には、賃料改定が勿論重要だ。しかし今一度原契約全てを読んでみる必要がある。


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