BRIEFING.637(2025.04.10)
「賃貸等不動産」と「貸家」及び「貸家建付地」
会計の世界で言う「賃貸等不動産」は、「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」により次のように定義されている。
棚卸資産に分類されている不動産以外のものであって、賃貸収益又はキャピタル・ゲインの獲得を目的として保有されている不動産(ファイナンス・リース取引の貸手における不動産を除く。)をいう。したがって、物品の製造や販売、サービスの提供、経営管理に使用されている場合は賃貸等不動産には含まれない。そして賃貸等不動産には、(1)貸借対照表において投資不動産として区分されている不動産、(2)将来の使用が見込まれていない遊休不動産、(3)上記以外で賃貸されている不動産、が含まれる。
一方、国税庁の財産評価基本通達には、これと似た概念として「貸家」と「貸家建付地」がある。
「貸家」とは借家権の目的となっている家屋をいい、「貸家建付地」とは貸家の敷地の用に供されている宅地をいう。それぞれ「自用の家屋」「自用地」よりも低く評価される。一棟の建物の一部がそうである場合には、その割合(賃貸割合)を把握し、建物全体、敷地全体の評価額を求めることになる。
この場合、「貸家」か「自用の家屋」かは課税時期において建物が賃貸されてるか否かで判断するのが原則であるが、継続的に賃貸されてきたのに、たまたま課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる場合には、その部分を賃貸されている部分に加えてよいこととされている。
その可否は、@課税時期前に継続的に賃貸されてきたものか、A賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたか、B空室の期間、他の用途に供されていないか、C空室の期間が課税時期の前後例えば1ヶ月程度であるなど一時的な期間であったか、D課税時期後の賃貸が一時的なものではないか、などの事実関係から総合的に判断される(国税庁の質疑応答事例より)。
Aについては、原状回復工事や募集条件の検討等で、募集開始が「速やかに」行えない場合もあろう。Cについては、前述の期間に加え、実際の契約・入居までには相当の期間が必要で、前後1ヶ月(計2ヶ月間)では短すぎ現実的ではない。タイミングの偶然で評価額が左右されるのもいかがなものか。
不動産鑑定評価では、価格時点の賃貸借契約の有無で「貸家」か「自用の建物」か、「貸家建付地」か「建付地」を判断する。但し「貸家」「貸家建付地」だからと言ってそれが「自用の建物」「建付地」より評価額が低いとは限らない。むしろ逆かも知れない。空室の多い貸しビルと満室稼働の貸しビルでどちらが高額か考えてみれば分かる。いずれにせよ、一時的な「自用の建物」「建付地」は、不動産の価格に大きな影響は及ぼさないと考えられる。
なお、同評価基準(第2章第2節のT)には土地の類型として「更地」「建付地」「借地権」「底地」「区分地上権」が例示されている。だが、なぜか「貸家建付地」がない。実務上は頻出する類型なのだが・・・。
さて、ある会社が所有する賃貸ビルの一部に自用部分(例えば支店として経営管理に使用)がある場合、冒頭の会計基準に従うと、その部分は「自用」として「賃貸等不動産」から除かなければならない。そして、賃貸部分の一時的空室は「自用」でなく「賃貸等不動産」に含めなければならない。一方、国税庁の通達等に依れば、その空室が国税庁の「貸家」「貸家建付地」に含まれるか否かは、前述の質疑応答に照らし微妙である。また、不動産鑑定評価においては、一時的空室でも、価格時点において空室なら、一応は「自用の建物」「建付地」と判断せねばなるまい。
それぞれ別の目的に沿ったものとは言え、面倒なものである。