BRIEFING.638(2025.04.21)

直接還元法における運営純収益と純収益(1)

収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の収益価格を求める手法であり、その方法には次の2つがある。

@一期間の純収益を還元利回りによって還元する方法(直接還元法)
A連続する複数の期間に発生する純収益及び復帰価格を、その発生時期に応じて現在価値に割り引き、それぞれを合計する方法(DCF法)

@の純収益は、次の通り求められる(不動産鑑定評価基準第7章Wの3の(1)参照)。
総収益 − 総費用 = 純収益

Aの各期の純収益は、次の通り求められる(同基準各論第3章第5節Uの別表2参照)。
運営収益 − 運営費用 = 運営純収益
運営純収益 + 一時金の運用益 − 資本的支出 = 純収益

なお、@の総収益には一時金の運用益が含まれており、@の総費用には資本的支出が(平準化され修繕費の一部として)含まれている。したがって@Aの純収益算出過程の差には一旦「運営純収益」を求めるか否かという相違しかなく、求められる純収益はどちらも概ね同じということになる。

但しAの場合には、割引率によって各期の収益・費用の発生時期を、収益価格に反映させることができる。したがって、毎期日常的に発生する修繕費と、数年に1度しか発生しない資本的支出とを区別することに大きな意義があるのである。

例えば、大規模修繕を行う直前のビルと、それを行った直後を想定した場合の同じビルの収益価格。Aでは、日常的修繕費と資本的支出(大規模修繕費)を区別することにより、その価格差をうまく収益価格に反映できるのに、@ではそれが難しい。この点はAの真骨頂であり、@の大きな欠点でもある。

しかしながら実務上、@の場合でも、Aと同様に一旦「運営純収益」を求めている場合が多い。

不動産鑑定評価基準にAの手法が記載されるようになる前、@に「運用純収益」の概念はなかったし、Aの登場後も同様である。それにもかかわらず、@の場合にでもAと同様に純収益を求める(即ち資本的支出を修繕費と区別する)理由としては次のことが考えられる。

1.DCF法を採用した場合の費用収益項目との整合性を持たせたい。
2.DCF法の費用収益項目と揃えておくことで精度が高まったように見える。
3.「不動産投資家調査」の純収益と同じベースの純収益(運営純収益)が求められる。
4.投資家がその不動産の投資価値の判断に運営純収益を使うから。

「不動産投資家調査」とは、日本不動産研究所が毎年2回行っている調査で、市場における利回りを調査した資料として、業界で唯一頼りにされている数値だ。そこではその利回りを「期待利回り」と呼び、次のように定義している。不動産鑑定評価基準の言う「期待利回り」とは意義が異なるので注意が必要だ。

「期待利回り」・・・投資価値の判断(計算)に使われる還元利回りを指す。通常、純収益(NOI)を期待利回りで割ったものが投資価値になる。

この場合の「純収益」の定義は、不動産鑑定評価基準の「純収益」とは少し異なる。次回に説明する。


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