BRIEFING.639(2025.04.28)
直接還元法における運営純収益と純収益(2)
「不動産投資家調査」(以下、調査という)の「期待利回り」について、前回その定義を述べた。その定義の中に出てくる「純収益」は次のように定義されている。
「純収益」・・・減価償却前、税引き前の純収益(NOI)を指す。不動産より得られる有効総収入から総費用を控除したものである。(大規模改修のための資本的支出、及び一時金の運用益は含まない。ただし、経常的な修繕費は維持費に含めている。)
括弧書きの補足説明により、それが不動産鑑定評価基準(以下、基準という)の「運営純収益」に該当するものであることが分かる。この「純収益(NOI)を期待利回りで割ったものが投資価値になる」という訳だ。
この調査の投資価値と、基準の(直接還元法による)収益価格とを整理すると、次のように表される。なお(ア)(イ)は一時金の運用益と資本的支出である。
調査の純収益 ÷ 調査の期待利回り = 投資価値
基準の純収益 ÷ 基準の還元利回り = 収益価格
基準の純収益 = 調査の純収益 + (ア) − (イ)
ここで、上記投資価値と収益価格とが等しいとした上で、さらに整理してみると次のようになる。
基準の還元利回り = 調査の期待利回り×(調査の純収益+(ア)−(イ))/調査の純収益)
もし、運営収益が100、運営費用が70、(ア)が0.2、(イ)が2であったとし、調査の期待利回りベースの利回りが4.0%だったすれば、基準の還元利回りベースの利回りは次の通り求められる。
4.0% × ((100−70+0.2−2)÷(100−70)) ≒ 3.8%
両利回りには、相当の差が生じるから、調査の期待利回りを、基準の還元利回りと、同次元のものと扱ってはならない。上記相違、即ち(ア)(イ)の有無を勘案して比較考量しなければならない。
前回述べたように、調査の期待利回りは「唯一頼りにされているもの」ではあるが、上記相違を見極めた上で、基準の還元利回りの水準に、適切に変換しなければならない。
以下は、ある不動産投資法人が不動産を取得または譲渡した際の鑑定評価書(概要)の直接還元法の中から拾い出した、又は算出した数値である。資本的支出はエンジニアリングレポートを基礎に査定され、平準化された金額と思われる。
| Aビル | Bビル | Cビル | ||
| (1) | 資本的支出/運営純収益 | 6.0% | 6.3% | 19.8% |
| (2) | 純収益/収益価格=基準の還元利回り | 3.5% | 3.6% | 3.5% |
| (3) | 運営純収益/収益価格=調査の期待利回り | 3.7% | 3.8% | 4.3% |
当然ながら、(1)が大きいと、(3)も跳ね上がることが分かる。
ところで、「修繕費」とこれと区分すべき「資本的支出」との区別には難しい点が多い。次回、その定義を、税法の通達及び不動産鑑定評価基準から見てみる。