BRIEFING.641(2025.05.19)

統計の遡及的改定と地価公示価格

人口統計には、国勢調査を元にした推計人口と、住民基本台帳による人口とがある。住民票を置いている市町村に、その人が実際に住んでいるとは限らないため、より実態を表しているのは前者であると考えられる。しかし、後者は毎月各市町村で明確に確定されるのに対し、前者は、5年に一度(直近では令和2年)の国勢調査の人口を「基準人口」とし、その後5年間は「基準人口」に「自然動態」「社会動態」「国籍の異動による純増減」を加えて推計人口として算出されている。

ところが5年間の内に誤差が推計値に累積し、その結果が国勢調査の結果と一致しないことになる。

そこで総務省統計局では「補間補正」により、過去に遡及して「補正」した人口を公表している。この補正により、過去からの人口のグラフがなめらかになる。その具体的計算方法は、複雑で難解なのでここでは触れない。

「推計」とは言え一旦公表した人口を5年も遡って改めるとはおかしな気もするが、より正確な実態を把握するためには必要な作業なのであろう。

GDPについて内閣府は、公表時期を出来るだけ早めるために、早期に利用できる基礎資料を用いて推計するとともに、より精度の高い基礎資料の入手に応じて、段階的に推計値を改定し、統計の正確性を一層高めていくこととしている。

具体的には、まず当該四半期最終月から1ヶ月と2週間程度後に取り急ぎ「1次速報」が、その約1ヶ月後に「2次速報」が公表される。そして毎年12月頃に前年度の「第一次年次推計(旧称:確報)」が公表される。これで確定かと思ったらさらにその1年後に第二次年次推計(旧称:確々報)があり、そのまた1年後に「第三次年次推計」がある。

そして最後に5年に1度の「基準改定」もある。国勢調査と同じく、一旦公表したGDPを5年間遡って「改定」するのである。これを知らないと、古い統計書の数値と見比べて、数値が変わっていて驚くことになる。

さて、国交省が毎年3月に公表する地価公示価格はどうだろうか。

価格時点は毎年1月1日で、一旦公表された価格がその後「補正」「改定」されることはない。あくまでも、鑑定評価を行った日までに得られた情報に基づいて求められた価格が最終、ということである。それ故、官報で「公示」されるのであろう。

しかし、後から判明した取引事例により、比準価格を再調整すべき場合もあろう。また、建築費が思っていたより上がっていた(またはそれほどでもなかった)、あるいは、成約賃料が実はもっと安かった(または高かった)、ということで収益価格を見直すべき場合もあろう。

そこで、3月の公表を速報とし、新たに得た情報を勘案して修正を加え、1年後に確報として公表してもよいかも知れない。加えて5年後に、当時の適正な地価は実はこの程度でした、と改定値を公表してもよかろう。土地政策の再検討・軌道修正に役立つのではないだろうか。

但し、その遡及的改定が、固定資産税額や相続税額の更生に結びつくとすれば大変だ。税務署と納税者との間で大混乱が生じるに違いない。やはり現実的に考えると、最初の公表値を最終確定値としておかなければなるまい。


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