BRIEFING.642(2025.05.29)
建物の減価要因(1)
不動産の多くは建物及びその敷地からなる。そのうち土地(敷地)は、地震や洪水といった災害によって損傷することはあるものの、時の経過によって老朽化することはない。しかし建物は、適切に維持管理・修繕されていたとしても老朽化から免れることはできない。そしてそれによる価値の減少は避けられないと考えられる。一般的あるいは地域的な環境の変化による価格変動(建築費の上昇等)とは別に、建物の価値は基本的に下落してゆく運命にあると言わねばならない。
会計の世界では、建物を減価償却資産の1つと捉え、定額法(かつては定率法も可)によってその価値を毎年減じてゆく扱いとしている。但し減価償却の目的は、適正な費用配分を行うことによって毎期の損益計算を正確ならしめることであるから、資産価値の表示はその裏返しとしてなされるもの、しかも過去の調達額を基礎としたものでしかない。
税務の世界でも同様に減価償却の仕組みが採用されており、恣意性を排除する意味で、法人税法においても所得税法においても、一定のルールの下、厳格に運用されている。
地方税である固定資産の評価においては「固定資産評価基準」に基づき、使用されている資材、施工量等から再建築費評点数を求め、それを減点補正するという手法が採られている。建物の評価額は再建築費評点数に経年減価補正率を乗じ、さらに評点1点当たりの価額を乗じて次の通り求められる。
評点数 = 再建築費評点数 × 経過年数に応ずる減点補正率
評価額 = 評点数 × 評点1点当たりの価額
経年減価補正率は、総務省の告示による経年減点補正率表によって定められる。その表には木造建物用と非木造建物用とがあり、前者を概観すると、経過年数1年で0.80、10年で0.50、20年で0.25、27年以上で0.20となり、以降それ以上の減点補正はない。非木造なら、45年以上で0.20となり、以降それ以上の減点補正はない。どちらも古くなっても20%は価値が残る(課税される)ことになり、実態に合わないとの批判が多い。
不動産鑑定評価基準では、不動産の積算価格を求める過程に「減価修正」という作業がある。減価償却や経年減点補正に類する減価の手法と言えるだろう。
減価修正の目的は、減価の要因に基づき発生した減価額を対象不動産の再調達原価から控除して価格時点における対象不動産の適正な積算価格を求めることである。そして、減価修正に当たっては、減価の要因に着目して対象不動産を部分的かつ総合的に分析し検討し減価額を求めなければならない。不動産鑑定評価基準では、減価の要因を、物理的要因、機能的要因、経済的要因の3つに分けている。その上で、減価修正の方法として、@耐用年数に基づく方法、A観察減価法の2つを挙げこれらの併用を求めている。
@は前述の減価償却や経年減価補正と同じような考え方のものである。但し耐用年数をどう見るか、定額法か定率法かは「対象不動産の用途や利用状況に即して決定すべき」と、かなり大雑把な規定である。Aは種々の「減価の要因の実態を調査することにより、減価額を直接求める方法」であり、こちらもザックリした説明である。
次回は、建物の減価要因をこれとはまた違った切り口、@単位期間の使用価値と、A使用可能な残存期間という面から考えてみる。