BRIEFING.643(2025.06.05)
建物の減価要因(2)
建物は、適切に維持管理・修繕されていたとしても老朽化は免れられず、期間の経過に伴う建物の価値の減少は避けられない。前回は、それによる価値の減少を表現する方法として、減価償却、経年減点補正、減価修正を紹介した。今回は、建物の減価要因を、これらとは少し違った切り口で見てみることとする。
まず、建物の価値は次の2つから構成されていると考える。
@単位期間の使用価値・・毎月又は毎年の使用価値。賃料に反映される。
A使用可能な残存期間・・使用価値が存続する期間。@と相まって価格に反映される。
いずれも適切な維持管理・修繕によって@の維持又は増加及びAの延長も可能だが、長期的には逓減・縮減が避けられない。そして価格は、@をAの期間にわたって積算することによって表現される。
この価値の捉え方は、不動産鑑定評価の収益還元法の1つ、DCF法の考え方に類似する。但し、DCF法では、インフレによる賃料の上昇を、毎期の運営収益に織り込んだ上で、割引率で割り引くが、面倒臭いので、インフレ率=割引率と見なし、割引きを省略してもよいだろう。その代わり、分析期間は、建物の使用価値が0になるまでの期間(新築建物なら50年間程度か)であるから、DCF法よりうんと長い。
一般に、@は建物の老朽化で(インフレを想定しても)に逓減する。同時にAも年々縮減する。そうすると、毎年の@の逓減にAの縮減が加わり、その両者を反映する価格は、加速度的に減少してゆくと考えられる。この点は、減価償却の定額法(定率法ならなおさら)、経年減点補正の20%残存といった考え方と相反することとなる。
但し、減価償却の目的が適正な費用配分である点、及び経年減点補正に基づく固都税が主に行政サービスの対価であるという点に鑑みればそれぞれに納得できる考え方である。
市場における時価の動きは、前述の加速度的価値の減少に近いのではないだろうか。
他に指摘しておくべきこととして、賃借人になろうとする者は@に注目し、所有者になろうとする者は@A両方に注目しなければならないという点がある。賃借人になろうとする者は今の使用価値が、賃料に見合っているかどうかで借りるか否かを判断する。所有者になろうとする者は今の使用価値の大小に加え、それが存続する期間の長短が、価格に見合っているかどうかで買うか否かを判断するであろう。
このことは、不動産鑑定評価基準の新規賃料を求める際の「基礎価格」が必ずしも「正常価格」ではないことを示唆している。前者は@のみを重視した価格であるべきで、後者は@Aをともに重視した価格でなければならない。
建物の減価要因が@Aの2つから構成されているという考え方に名前を付けるとすれば「将来使用価値積算」とでも言うべきだろう。減価償却、経年減点補正、減価修正は、いずれも「減価」の把握を優先し、取得原価、再建築費、再調達原価といった概念から、これを控除することによって、今の価格を求めようとするものである。「将来使用価値積算」は、今後利用可能な使用価値の総合計を求めようとするものである。