BRIEFING.116(2006.7.31)

不動産の賃料と価格との関連

不動産の経済価値は、賃料または価格で表される。そしてこれらはともに不動産を使用収益することの対価であるが、

●賃料は一定期間の使用収益に対するもの、
●価格は今後永久の使用収益に対するもの、

という点で大きく異なる。

賃料は「今だけ」、価格は「今後ずっと」の経済価値に対応するものである。

ところで、土地建物からなる不動産は、時の経過とともに、物理的・機能的・経済的に劣化し、その価値(賃料も価格も)が下落してゆくのが一般的である。

そして、物価・金利等の一般的要因や、周辺環境等の地域要因に全く変わりがなかったとした場合、その下落の原因には次の2つが考えられる。

@建物の効用の低下
A建物の残存耐用年数の減少

@が賃料も価格も下落させることは言うまでもない。しかしAは「今」には直接は影響を与えず「今後」にのみ影響を与えるものであるため、価格を下落させるが賃料には影響を及ぼさないと考えられる。

したがって、不動産の賃料と価格とのバランスは、時の経過に伴って変化すると言える。価格ほどには賃料は下落しないのである。

価格に対する賃料の割合が大きくなってゆくと言ってもよい。

事実、いわゆる「収益物件」の取引利回りを見てみると、新築マンションなら5〜6%、築10年もすれば7〜8%、10年超なら10%前後といった具合である。

この「賃料は一定期間、価格は今後永久」という性格の違いを軽視すると、古い建物の積算賃料は低めに求められ、逆に収益価格は高目に求められる。

不動産鑑定評価において、賃料と価格とを関連づけるのが期待利回りであり、還元利回りである。そしてその査定には主観の存在が避けられない上、その査定の如何が両者に及ぼす影響は極めて大きいという問題を抱えている。


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