BRIEFING.123(2006.11.02)
継続賃料の本質
建物の所有を目的とする土地の賃貸借関係にはいった両当事者は、次の理由により、簡単にそこから離脱することはできない。
貸主:借地借家法で短期の契約は不可。更新拒絶も困難。
借主:建ててしまった建物を持って出ることは困難。
この「離脱困難」な状況にある特定の当事者間で成立するというのが継続賃料の大きな特徴である。
不動産鑑定評価基準では「不動産の賃貸借等の継続に係る特定の当事者間において成立するであろう経済価値を適正に表示する賃料」と定義されている。
ここで留意すべきは、定義の最後の部分が、次の@ではなくAであるということである。これに対し、正常賃料(新規賃料)の定義では@になっている。
@経済価値を表示する適正な賃料。
A経済価値を適正に表示する賃料。
これは、正常賃料に「実質的適正性」が求められているのに対し、継続賃料には「形式的適正性」しか求められていないためと考えられる。
もし継続賃料のにも「実質的適正性」を求めるなら、まず、方針と言うか、政治的価値判断と言うか、どういうものが適正かという一定の指針が必要だろう。
正常賃料の「実質的適正性」が市場という多くの人々の判断の収束により形成されるものであるのとは、大きく異なる。
この辺に継続賃料の本質があるように思える。
現実の賃料改定交渉の中では、両当事者の交渉の上手下手、熱意、経験、知識、割くことのできる時間と費用の大小等が大きく作用するであろう。これらを排除したとしても(現在の継続賃料評価の各手法が従前賃料を重視する結果これらの要因を排除しきれていないことについてはさておき)それだけでは何が適正かは見えてこない。
市場メカニズムが働かず、その想定もできない世界で、何を拠り所に「適正性」を判断すべきなのか。独善的でなく、不動産の賃貸借に関わる人々の大多数の賛同を得、両当事者に公平で、正義に反せず・・・といった理想的で適正と言える継続賃料像を、まず広く世に問う必要がある。