BRIEFING.013(2001.12.03)

マンションの敷地の持分当たり単価(2)

「建物の区分所有等に関する法律」に定められた敷地利用権割合の原則は「専有部分の床面積の割合」(法第14条第1項)である。しかし「規約で別段の定めをすること」もできる。店舗・事務所を含むマンション(いわゆるゲタばきマンションや再開発マンション)の場合、実際に規約で別段の定めをしている場合が多いし、住居ばかりのマンションでも、階層・位置による価格差を重視して別段の定めをしている場合があろう。

これら別段の定めは、階層・位置・用途等の別による価格差を、建物の価格差のみに起因するもの(建物起因説)とせず、土地建物両方の価格差に起因するとの立場(両方起因説)に立ち、そのことを規約に明示しておこうとするものであると言えよう。

さて、例えばあるマンションが地震で全壊した場合のことを考えてみる。残された土地に対する各区分所有者の土地に対する権利の割合は、建物起因説に立てば、従前建物の専有床面積割合ということになる。したがって最上階の人も、2階の人も、1階の店舗の人も、専有床面積が同じなら、皆同じということである。

しかし両方起因説に立てば、建物全壊前の価格を考慮して決めるということになる。だが建物がなくなってしまえば最上階も2階もない。住居だったか店舗だったかも関係ないということにならないか。まして土地に対する権利が転々売買されれば、転得者にとっては知ったことではない。そこで別段の定めを置いて割合を定め、その割合を登記しておけば、全壊前の価格に応じた土地に対する権利が保護されるのである。

しかし、階層・位置・用途による価格差は、物理的・社会的・経済的な地域の状況の変化、価値観の変化等により変動するものであり、その一棟の建物のライフサイクルを通じて普遍的なものではあるまい。とすればせっかく規約で定めた敷地利用権割合(土地に対する権利の割合)が、不合理なものになってしまう可能性がある。

例えば、最上階と2階とで5:3の価格差を有していたマンションにおいて、周辺にもっと高層のマンションが林立した結果、その差が4:3程度になってしまうこともあるだろう。新築時の分譲価格に大きな差があっても、中古市場においてはさほどの差はないというのは一般にも認識されているところである。また、2階の住戸と1階の店舗とで2:3の価格差を有していたマンションにおいて、地域の衰退が進み、その差が2:2になってしまうこともあるだろう。このような流動的基準で敷地利用権割合(土地に対する権利の割合)を定めることは妥当であろうか。


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