BRIEFING.141(2007.06.18)

国有地の入札による売却とバブル懸念

「骨太の方針'06」に沿い、政府は気象庁等の移転・跡地売却を進める方針という。一方、今、それを入札により売却するのはバブル再燃のきっかけになるのではとの懸念もある。

確かに昭和60年代にバブルが生じた原因の1つが、公共用地の入札による売却であったともいわれる。

しかし、貴重な国の財産を、いわゆる公示価格ベースにより特定の者に売却することは許されない。

また、そもそも、土地の新規供給が地価の高騰を招くとは考えられない。

都心で今まさに逼迫しているオフィス需要を冷ますためには、有効利用されていない土地を市場に放出し、オフィスを大量に供給すべき(但し都市計画に沿って)である。

昭和60年代の「入札犯人説」は、地価の顕在化により固定資産税が上がり、都心に住む人が追い出される、というやや論点を異にする問題であった。地価の割に安い税金という既得権やそこに生じた庶民文化をどう保護するかという価値判断の問題である。

2003年問題の際にはオフィスの大量供給により一時的に需給が冷えたし、そうなることを誰もが(程度の差こそあれ)予想していたはずである。供給により需給が緩和され、価格が下落するであろうことは、「朝まで徹底討論」するまでもない。

ところで、株式市場には「売買の停止」という市場の暴走を防ぐ手だてが用意されている。しかしこれは、不明確な情報を確認し、またその内容を周知させるという趣旨のものと思料する。ガセネタの排除は、公共用地の入札に当たっても当然である。

外為市場への介入は、言うまでもなく、高くなりすぎた時に売り、安くなりすぎた時に買い支える。土地が高くなりすぎているかどうかはともかく、政府が土地を売っても地価は下落こそすれ、高騰にはつながらないだろう。

仮にびっくりするような価格で落札されたとしても、それは高騰を煽ったのではなく、それまで潜在的であった価格が顕在化しただけと判断すべきである。

金融機関ももう「公的資金」で助けてはもらえない。ペイオフを恐れる預金者も金融機関の融資態度を見ている。ファンド(特に外資系)やその投資家はもっと敏感だろう。

心配すべきはむしろミニバブル崩壊ではないか。


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