BRIEFING.158(2008.01.21)
「区分所有建物」と「区分建物」
不動産鑑定評価基準によると「区分所有建物及びその敷地」とは次の3つからなるとされている。
@専有部分
A共用部分の共有持分
B敷地利用権
この内@は「区分所有建物及びその敷地」の「区分所有建物」に対応し、Bは「その敷地」に対応すると考えられるが、Aがどちらに入るのかはっきりしない。またそもそもこのような対応関係はないのかも知れない。
いずれにしても、不動産鑑定評価基準の言う「区分所有建物及びその敷地」が、分譲マンション等の1棟全体を指すのではなく、その中の1個(1戸)の不動産を指していることは間違いない。
一方、「不動産登記法」第2条第1項には「区分建物」という用語があり、次のように定義されている。
「1棟の建物の構造上区分された部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものであって、建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する専有部分であるもの」
また、阪神大震災の年にできた「被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法」第2条第1項では「建物の区分所有等に関する法律第2条第3項に規定する専有部分が属する1棟の建物」を「区分所有建物」としている。
ちなみに区分所有法には「区分所有権」は出てきても「区分所有建物」も「区分建物」も出てこない。
この2つの用語が1個(1戸)を指すのか、1棟を指すのかを、次表にまとめる。
1個 | 1棟 | |
ア.民 法 | − | − |
イ.区分所有法 | − | − |
ウ.不動産登記法 | 区分建物 | − |
エ.被災区分建物再建法 | − | 区分所有建物 |
オ.不動産鑑定評価基準 | 区分所有建物 | − |
ウエオにはいずれも片方の用語しか登場しないが、ウの「区分建物」とエの「区分所有建物」とを採用することにより、1個と1棟の区別ができる。ところがオの「区分所有建物」を認めると混乱してしまう。
また、ウエが立派な法律であるのに対し、オは“答申”にすぎない。
さらに、ウの「区分建物」は分譲マンションの登記事項を通じて衆知されるに至っているし、「区分所有建物」は1棟を指す方が一般の感覚に合致するような気もする。
ここはオがウエに譲って用語を改めてはどうだろうか。