BRIEFING.198(2009.04.30)

“たすきがけ”の抵当権で注目される土地建物割合

ビルの建築工事を請負っているゼネコンは、施主が資金繰りに窮した場合、これ以上の出血を避けるため、工事をストップさせてしまうことがある。

しかしストップすれば代金回収の見込みはますますなくなり、妥当な対応とは言えない。自腹を切って竣工させた上で土地建物をまとめて売却し、そこから代金の回収を図るというのが妥当な解決策となろう。

この点、土地に抵当権を有する銀行としても同じである。ゼネコンに工事を止められたり留置権を行使されたりしては融資の回収は見込めない。

そこでゼネコンとしては、工事を続行しビルを竣工させ、施主に引渡をするが、建物には順位1番の抵当権を付けさせろと銀行に迫り、銀行もこれを飲むこととなる。

かくして抵当権は次の如くとなる。

    土地   建物
順位1番   銀行 ゼネコン
順位2番 ゼネコン   銀行

これを“たすきがけ”と言い銀行とゼネコンとの妥協の結果である。

時には銀行に黙って施主に建物の引渡を行い、表示登記・所有権保存登記をさせた上で、ゼネコンが順位1番の抵当権を付け、このような状態に至ることもあるだろう。

建築基準法上の完了検査前であっても、不動産登記法上「建物」であれば登記は可能だ。

さて、これに基づき、売却代金を分け合う訳であるが、昨今、両者が満額回収できるはずはない。そこで順位1番で押さえている担保物件の価値の割合で売却代金を分け合うこととなる。そのため、土地建物の価格割合がにわかに注目を浴びることとなっている。

不動産鑑定評価は、その答えを容易できるであろうか。

この場合次の@かつAであれば、積算価格(土地建物の内訳が明確)の内訳で按分すればよい。しかし@またはA、あるいはその両方が満たされていない場合はどうすべきか。

@鑑定評価額≒売却代金
A鑑定評価額≒積算価格≒収益価格

安易に積算価格の土地建物内訳で按分、では説明にならない。

銀行とゼネコンの利害が対立するだけにむずかしい判断に迫られる。


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