BRIEFING.199(2009.05.21)

“ものさし”を変えて見る地価

決算を迎え、固定資産の減損処理に加え、棚卸資産である販売用不動産への低価法適用も強制となり、不動産を所有することのリスクが再び顕在化しつつある。

来年3月末決算からは賃貸用不動産の時価評価(注記のみ)も控える。

しかし、所有する不動産は、物理的、機能的に劣化した訳ではなく、「円」という通貨に対して価値が下落しただけと考えることもできる。

たとえば、平成19年末に100億円で取得した販売用土地の正味売却価格が、平成20年末において80億円になったとしよう。

しかし「米ドル」「ユーロ」を“ものさし”にしてみると、下表の通りとなる。

    円 米ドル ユーロ
2007年末  100億 8,850万 6,024万
2008年末   80億 8,889万 6,299万
 変動率 ▲20% +0.5% +4.7%

この間に113円から90円に下がった米ドルから見れば0.5%の、166円から127円に下がったユーロから見れば4.7%の、それぞれ含み益となる。

資源国通貨として一時話題となった豪ドルやランド(南アフリカ)ならどうだろう。グローバルな視点から見れば日本の地価は悲観すべきものではないのか。

また、「日経平均株価」「NYダウ工業株30」、さらに「原油(NY先物WTI)」、「金(ロンドン現物)」を“ものさし”に、それぞれの1単位当たり価格が、100億円、80億円で何単位買えるかを表すと、下表の通りとなる。

    円  日経平均 NYダウ NY原油 ロンドン金
2007年末
 
 100億
 
 653,253
(15,308円)
6,671
(13,265ドル)
922,021
(95.98ドル)
105,793
(836.5ドル)
2008年末
 
  80億
 
 902,935
(8,860円)
10,129
(8,776ドル)
1,993,024
(44.60ドル)
102,761
(865.0ドル)
 変動率 ▲20% +38.2% +51.8% +116.2% ▲2.9%

「円」以外の“ものさし”から見れば、日本の土地、さらに円建て現預金の“評価額”は大きくふくらむ。但し円建て借入金の“評価額”もふくらんでしまうのではあるが。


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