BRIEFING.218(2010.03.15)

USJの地代、今時値上げ?−市が調停申立へ

大阪市此花区のUSJ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンは、その敷地の一部を大阪市から賃借している。報道によると、その地代は他の民間から賃借している部分の地代よりかなり安いため、市が値上げを申し入れていたが、合意に至らず、調停の申立に及んだという。

USJの言い分は「現在の賃料はもともと市の提示に基づいて決めた。周辺の地価が下がる中、賃料を上げる根拠が見いだせない」とのこと。市にしてみれば、もともと安かったのだから、たとえその後、地価下落があっても値上げは妥当、といったところか。

ところで、不動産鑑定評価基準による継続賃料評価の手法には、@差額配分法、A利回り法、Bスライド法、C賃貸事例比較法があり、これらのうち、正常賃料(新規賃料)が関与する手法は@のみである。

ABは正常賃料の影響を受けない手法である。従前賃料がそれを定めた時点において、少なくとも当事者間では適正だったという前提あるから(従前適正の仮定)である。それが物価の変動や地域の変化で狂ってきたので修正しよう、復元しようという手法である。したがって、客観的な正常賃料は必要ないのである。

ではこの前提がない場合、つまりUSJの地代のように、安いと認識しつつ(ここではそれが事実と仮定する)、諸般の事情から市がしかたなく安く貸した場合である。

この「諸般の事情」は契約の続く限り賃料に影響するのだろうか。

この点、売買と賃貸借との比較が参考になる。

仮にUSJへの賃貸が売却だったとしたらどうだろう。今更「安く売ってやったのだから追加でもう少し払ってよ」とは言えない。賃料とは違い、価格は改定不可能だからである。安く売った事実は取り返すことができない。

では、「改定」が法定されている賃料についてはどうか。やがて当初の安さは治癒されるべきなのであろうか。

問題は、「改定」があくまでも契約後に生じた狂いの修正・復元のみなのか、当初の契約そのものの修正なのか、という点であろう。

安く貸した土地の賃料は、孫の代まで、いや、永久に安くあるべきか(水準維持説)。そうではなく、客観的適正水準へ近づいてゆくべきか(正常接近説)。

UFJは前者、市は後者の立場であることは言うまでもない。


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