BRIEFING.224(2010.06.15)

後に有害と判明した物質による土壌汚染

購入した土地に含まれていたフッ素の除去費用を、買主が売主に求めた訴訟の最高裁判決があった。

問題は、フッ素が売買当時、有害物質とはされておらず、後で土壌汚染対策法の有害物質と認定されたものであり、それが「隠れた瑕疵」だったと言えるかという点であった。

判決は「契約締結当時の社会通念を斟酌して判断すべき」とし、“当時”は瑕疵ではなかったと判じ、高裁判決を覆して、売主の責任を否定した。

確かに、当時としては何ら瑕疵はなかったのであるから、妥当な判決と言えよう。

もともとあったもののために多額の損害を被ることとなった買主には不満であろうが、社会通念や経済情勢、法令等の変化といった、物理的変化を伴わない地価下落はよくあることで、これらの場合同様、買主がその責任を負うべきである。

では、これが賃貸借契約であった場合、フッ素の除去はどちらの負担で行われるべきであろうか。

経済情勢の変化や法改正といった事情なら、継続賃料にそれが反映されてゆくべきだろう。しかし賃貸借の場合は、後から生じた瑕疵についても、貸主(所有者)がすみやかに取り除いてやるべきだろう。

土地の場合、後から瑕疵が生ずるという例は少ないが、建物の場合には、台風で雨漏りが生じたとか、老朽化でエアコンがつぶれたといったことがよくあり、その場合、貸主がこれらを修理するのが原則だからである。

従って土地の場合も同様に考え、貸主が瑕疵を修理(浄化)すべきである。

確かに、土地そのものに全く変化がないのに、貸主に全責任を課すことに躊躇はあるが、所有者である以上やむを得ないだろう。

しかし、建物が建ってしまっておれば浄化は不可能である。

そうすると、継続賃料でこれを解決するというのも一案であろう。

その場合、経済情勢の変化同様、遅効性・粘着性を所与とした減額とするのか、汚染による減価を一気に反映した新規賃料とするのか、論点は尽きない。


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