BRIEFING.234(2010.12.03)

宅地の転貸借料の減額と“逆ざや”

一般的な宅地の賃貸借契約では、転貸が禁止されており、特にその旨の条項がなかったとしても、借地借家法により、原則として許されない。

しかし、賃貸人の承諾があれば問題ないことは言うまでもない。

さて、ある賃借人は賃貸人の承諾を得て宅地を転貸したが、その受取る転貸料を支払う賃借料より、少し高めに設定した。つまり若干の“さや”を抜いたのである。

その後経済環境の悪化から、転借人が転貸人に対し転貸料の減額を申し入れた。が、それでは“逆ざや”になるという。

<転貸人>
実際に払っている賃料にプラスαがあって当然だ。
少なくとも“逆ざや”はあってはならない。

<転借人>
転借か直接賃借かは転借人には関係のないこと。
転貸人が賃貸人にいくら賃貸料を払っているかは知る由もない。

それぞれの言い分はこんなところだろうか。

しかし、転貸借料の減額が相当であるような経済環境下では、原賃貸借料も同様であるはずだから、両方について同様に減額が妥当だろう。タイムラグはあったとしても、基本的に“逆ざや”は回避されるべきだ。

一方、原賃貸人(所有者)がこれを甘受し減額に応じた場合、転嫁する先はない。もしローンでこの土地を取得していれば、支払金利が(賃料−固都税)を上回る可能性もあろう。

このような場合、地価も下落して固都税が安くなるだろうから、市町村へ一部転嫁はされると考えることができる。

では、ローンの出し手へは、この負担は一切転嫁されないのだろうか。金銭消費貸借にも、賃料増減額請求権のようなしくみがあってもよいのだが。

しかし、賃料の減額が相当であるような経済環境下では、金利水準も下落傾向にあることが多いから、安い金利に借り換えをすることにより、負担の転嫁が可能となるだろう。

賃料の水準と、金利水準との間には、直接の関係があるとは考えられていないが、インフレ率と名目利子率とに牽連関係があるのと同様、深い関係を認識しなければならない。


BRIEFING目次へ戻る