BRIEFING.235(2010.12.13)

賃料と金利水準に牽連関系?

不動産の賃料は、その賃貸借の目的物の価格と強い牽連関係を有している。高い物は高く貸し、安い物は安く貸すという当たり前のことからも分かる。

では、金利水準との関係はどうだろうか。

思うに、定期預金の金利が5%だった時と、今のように0.1%の時とで、賃料水準に違いがあるとは思えない。金利が上がったから賃料を上げろとか、下がったから安くしろなどという借家人もいない。

しかし、金利は資本のコストであるから不動産の取得に高いコスがかかる時にはそれを賃貸する際、そのコストが転嫁されてもよいのではないか。

また、ローン(変動金利)の支払額が、金利水準に大きく影響を受けることを考えれば、借家の賃料も影響を受けておかしくないとも思える。

動産のリース料が金利水準に影響されることは言うまでもない。

金利水準の影響を受けない理由としては、借り入れの多い賃貸人も、そうでない賃貸人との競争上、金利を賃料に転嫁できないからと考えられる。しかし、自己資金で取得した不動産とは言えども、自己または資本の出し手に利益分配することが必要であり、金利水準が高い時には高い分配が求められるだろう。

ところで、金利水準の高い時期は、インフレが進んでいる時期であるのが普通である。そのような時期には地価の賃料も上昇傾向であり、間接的には金利水準と賃料とに牽連関係があると認められる。

では、鑑定評価によって求められる賃料はどうなっているだろうか。

まず、新規賃料を求める手法のひとつ、積算法は、基礎価格(対象不動産の価格と考えてよい)×期待利回り+必要諸経費等、で求められる。この期待利回りは対象不動産やその近隣地域に係るリスクに依存するものの、その時の金利水準には影響を受けない。

継続賃料を求める手法のひとつ、利回り法は、現行賃料(または当初賃料)を定めた時点における純賃料利回りを復活させることによって狂いの生じた賃料を、基礎価格の変動に応じて修正しようとするものと言える。

金利水準に連動どころか、あえて金利水準を無視する姿勢のものである

スライド法は、現行賃料(または当初賃料)を定めた時点における純賃額を変動率によって修正し、狂いの生じた賃料を、物価にあったものに修正しようとするものと言える。

したがってこれも金利水準には関係がない。

やはり両者の関係は直接的なものではなく、間接的なものに過ぎないと考えられる。


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