BRIEFING.262(2011.11.29)

賃貸マンションの「追い出し条項」で適格消費者団体が提訴

民間賃貸マンションを借りる場合、賃借人は連帯保証人を立てるのが一般的であり、普通、1つの契約書で、建物賃貸借契約(賃貸人と賃借人)、連帯保証契約(賃貸人と連帯保証人)という2つの契約成立の証とする。

さらに賃借人と連帯保証人との連帯保証委託契約も兼ねていると考えられる。通常は子と親、部下と上司、といった緊密な関係の2人が、無報酬でこの関係に立つ場合が多い。

ところが、親兄弟や上司にも頼れないといった人、あるいは頼みたくないといった人は、「家賃保証会社」に有料でこれを頼むこととなる。

さて、連帯保証人を引き受けたこのような会社は、賃貸人から保証債務の履行を請求された場合、これを拒むことができない。立て替えて払わなければならない。

そこで「家賃保証会社」は賃借人にこれを求償し、回収困難と見るや賃貸借契約の解除、早期明け渡しを実行し、損失の軽減を図るのである。

今回、ある「適格消費者団体」は、ある「家賃保証会社」に対し、賃借人との間に結ばれる契約書の一部条項は無効だとして提訴した。その条項は次のようなものである。

@当事者間の信頼関係破壊に至らぬ段階で保証業者に解除権を付与。
A賃借人の動産任意処分権、錠の交換を行う権利を保証業者に付与。

賃料を払わず、だらだらと明け渡しを拒まれては、連帯保証人としてはたまらない。そこで上記のような条項、いわゆる「追い出し条項」が必要となったのである。しかし、賃貸人にも認められぬ自力救済を、保証会社に認めるというはいかがなものか。

では、これを無効としたらどうなるか。

保証料の値上げ、審査の厳格化、事故情報の共有・・・これでは「家賃保証会社」に頼らなければならない賃借人を市場から閉め出してしまうことになる。

では、これを有効としたらどうなるか。

需要も供給も増加、市場は拡大・・・が、滞納を理由に追い出され、家財も失うという人が出てこよう。

規制強化(無効)で弱者を救済するか、規制緩和(有効)で賃貸住宅市場の活性化を図るか。判決を注目しよう。


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