BRIEFING.295(2013.01.07)

「特定活断層調査区域」の指定で初の土地利用規制へ

マンションや一戸建住宅団地の開発用地に活断層やそれが推定される推定活断層が発見された場合、開発業者はできる限りそれを避けて建物の配置を考えると思われる。

マンション開発の場合なら、駐車場や公園、アプローチといった部分をそこに持ってくる。1棟にしたいところだが、やむを得ず2棟に分けるといったこともあろう。

一戸建住宅団地の場合なら、幹線・準幹線道路、公園等にするだろう。

しかし、現在の建築基準法に活断層を避けなければならない規定はない。したがって、設計者にも特定行政庁にも、活断層の有無を確認する義務はない。

一方で、活断層の有無や正確な位置、幅等をハッキリと特定した資料がないという現実がある。これでは規制もしづらい。地価に与える影響も大きいため、慎重にならざるを得ないだろう。

なお、活断層の存在は、宅建業法第35条の「重要事項」には列挙されていないものの、第47条1項に該当する事項と考えられることから、宅建主任者として通常なすべき調査をし、根拠となる資料に基づいて活断層について説明しなければならないと解される。

大阪府豊中市では、活断層の存在が強く疑われるマンション開発用地について、近隣住民が開発許可や建築確認の取り消しを求めて訴訟を起こしている。判決が注目されている。

また、神奈川県横須賀市の野比4丁目の大規模一戸建住宅団地では、市の指導を受けた業者が活断層の両側25m(幅50m)を、また同市の横須賀リサーチパークでは、両側15m(幅30m)を公園、駐車場、道路、空地等とした例がある。

さて、徳島県では、国内で初めて、条例で活断層を理由にした土地利用規制を行うこととなった。活断層の両側20m(幅40m)を「特定活断層調査区域」に指定し、一定の建物(病院、学校、一定規模以上の共同住宅他)を同区域内で新築・改築する場合、事業者は開発前に活断層の有無を調査・報告し、その結果を受けて県が建物建設を避けるよう勧告することができるという。

条例の名称は「徳島県南海トラフへの巨大地震等に係る震災に強い社会づくり条例」。「特定活断層調査区域」は中央構造線の県内部分となる見込みである。

存在する断層が「活断層」かどうかは、原子力発電所の再稼働にからんで報道されている通り、専門家の間でも意見が分かれる場合がある。位置も1本の線で「明示」できるのか。

様々な困難を踏まえての勇気ある第一歩と言えよう。


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