BRIEFING.312(2013.09.02)

継続評価における前年評価額の考慮

最有効使用が一戸建住宅の敷地である土地の鑑定評価額は、取引事例比較法のみによって求められるのが一般的である。

その宅地が造成・埋立て直後であったり、その地域に一戸建住宅の賃貸市場が認められる場合等を除き、原価法や収益還元法は適用困難だからである。

仮に山を造成または海を埋め立てて対象不動産と同等の宅地を再調達する費用を算出できたとしても、現にそうやって新たに宅地を調達しようという人がいない市場においては、それを基礎に求められた価格に意味はない(おそらく大変に高い)。

仮に一戸建住宅の賃料相場らしきものがあって、それに基づき純収益を求めることができたとしても、現にそれを目的に新たに宅地を取得しようとする人がいない市場においては、それを基礎に求められた価格に意味はない(おそらく大変に安い)。

一戸建住宅地の取引事例は比較的収集が容易であるため、取引事例比較法によって求められる価格は精度が高く、比準価格=鑑定評価額としてよいだろう。

ところで、同一宅地の継続評価(毎年評価)においては前年評価額からのアプローチも欠かせない。特に近年のように変動幅が小さいと考えられている時期においては、結果であるはずの対前年変動率を、最初から睨んで評価することも大切である。

実務上も継続評価においては、前年評価額が重視されている。前年評価額からスタートすると言っても過言ではない(好ましいとは言えないが)。

さて、では前年評価額を鑑定評価のどの段階で考慮するのかは意見の分かれるところであり、冒頭の例(一戸建住宅地)の場合、次のような考え方がある。

@先入観なく比準価格を求め、その後、前年評価額からの変動率を勘案して調整し鑑定評価額を求める(別途調整主義)。
A比準価格を求める段階で、前年評価額からの変動率を考慮し、その比準価格をもって鑑定評価額とする(織り込み主義)。

実務上は、Aの方法を取っている場合が多いと思われる。ただ、形式的には次のような形を取る場合が多い。

B先入観なく比準価格を求め、対前年評価額からの変動率によって検証の上、比準価格を鑑定評価額とする(結果検証主義)。

結果的にBになるようにAの方法で比準価格を調整する、というのが実際のところであろうか。


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