BRIEFING.314(2013.09.26)

保安林の地番指定に過信は禁物

不動産の登記簿に記載される地目には、不動産登記事務取扱手続準則第68条の23種類がある。各土地は1筆毎の現況によって、宅地、山林、田、畑等と判断される。

但し現況は宅地なのに登記地目は山林であったり、現況は道路なのに登記地目は用悪水路であったりといったことは珍しくない。

前述の準則第68条にはそれぞれの地目がどのような土地かが示されている。これらのうち、境内地と運河用地については、それぞれ宗教法人法と運河法の条文に説明を委ねている。公衆用道路については、(道路法による道路であるかどうかを問わない)とわざわざ括弧書きで説明が付されている。

いずれにしても行政の指定や認定と登記地目とは、直接関係するものではない。

したがって、登記地目が山林でも現況が農地であれば農地法上の農地であり、登記地目が田であっても現況が宅地なら農地法上の農地ではない(現況主義)。また、道路法上の道路、建築基準法上の道路が、公衆用道路として登記されているとは限らない。

さて、例外的なのが保安林である。これについては「森林法に基づき農林水産大臣が保安林として指定した土地」とされ、大臣の指定が要件とされており、他の地目とは性格を異にする。この指定は地番毎の指定であり、登記簿と関連づけやすいという事情が背景にあると思われる。

用途地域等が地図上で、あるいは道路や河川からの距離で(筆界とは無関係に)指定されるのとは性格が違う。

また、保安林は分筆しても各筆にそれが承継されるが、普通の山林と合筆された場合、登記地目は山林とされる。しかし従前保安林だった部分は保安林であり続けるため、この点で地番指定の原則は破られる。

しかも合筆で公図が訂正されると、保安林だった部分と山林であった部分の筆界は消滅し、それを公示するものはなくなってしまうのである。

ところで、実際に保安林である土地の登記地目が保安林になっているかというとそうでもない。前述の合筆によって登記地目が保安林でなくなったもの以外にも、保安林の指定を受けた土地なのに山林と登記されている土地は珍しくない。

地番指定と言いつつ現状がこれでは困ったものである。農林水産・法務両省の対策を期待したい。

また、地籍調査が完了した地域はよいとして、一般に山の公図は現況と大きく異なることが多い。したがって地番指定では、現地においても地図上でも保安林の範囲を明示・復元することができない。これも困ったものである。


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